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H3ロケット10号機の空に出た「夜光雲」、正体は凍った水蒸気

夏の夜空に広がる、自然現象としての夜光雲。今回のロケットの夜光雲とは成り立ちが違うが、同じ高さに浮かぶ氷の雲。
画像: 夏の夜空に広がる本来の夜光雲(自然現象)(CC BY-SA 4.0 / Wing, via Wikimedia Commons)。当サイトで縮小・切り抜きをしています。改変後の画像も同じ CC BY-SA 4.0 で提供します

10月20日の明け方、種子島や屋久島の空に出た「夜光雲」は、ロケットの水蒸気が高度約80kmで凍った氷だった。

H3ロケット10号機は4時41分03秒に種子島宇宙センターから打ち上げられた。積んでいたのは、火星の衛星フォボスのサンプルを持ち帰る探査機「MMX」だ。

夜光雲の正体は高度80kmの氷

JAXAは打ち上げ前から、特設ページで「夜光雲」が出る可能性を案内していた。仕組みは次のように説明されている。

高度約80kmの低温の高層大気中で、ロケットからの燃焼ガス(水蒸気)が氷となり、太陽光を反射して夜空に明るく輝く現象です。

ただし同じページには、高層大気の状態や風向きで予測が難しく、今回見えるかどうかは分からないとも書かれていた。結果としては、出た。

屋久島で開かれていた会合に参加していた片岡龍峰さんは、こう投稿している。

「打ち上げ後には夜光雲が舞っていました」

種子島からも、やまごん(@sado_kouta)さんが「夜光雲の観測に成功しました!」と写真つきで投稿している。

本物の夜光雲とは別もの

実は「夜光雲」という名前の現象は2つある。

ひとつは本来の夜光雲で、夏の緯度50〜70°付近の中間圏界面(地上およそ75〜85km)にできる、自然の薄い雲だ。冒頭の写真はこちらで、夏の夜空に青白く光る。日本で初めて観測されたのは2015年6月21日の早朝、北海道だった。

名前の由来は19世紀にさかのぼる。1887年にオットー・イェッセ(Otto Jesse)が撮影し、英語の「noctilucent cloud」(夜に光る雲)という呼び名が生まれるきっかけになったという。

ロケット由来の夜光雲が日本で目撃されたのは、今回が初めてではない。2017年1月24日夕方のH-IIAロケット打ち上げでは、関東以西の太平洋側を中心に各地で目撃されている。JAXAの特設ページにも、そのときの夜光雲を関東から撮った写真が載っている。

種子島から遠くの空でも見えた理由

夜光雲だけでなく、ロケット本体の光も全国から投稿された。目撃の報告は東京、千葉、埼玉、相模原、八丈島、沖縄、大分、内之浦などに広がっている。

地上はまだ暗いのに、遠くから見えるのはなぜか。JAXAの説明では、上空の機体には太陽光が当たっているからだ。国際宇宙ステーションや人工衛星が夜空で光って見えるのと同じ仕組みだという。

事前案内では、4時41分の打ち上げなら5分30秒後くらいから太陽光が当たって輝き始めるとされていた。遠くから見える条件は次の3つだ。

  • 空が暗く、地平線まで晴れている
  • 機体が地平線の上にある
  • 機体に太陽光が当たっている

平塚から撮った人は、動画にこう添えている。

「左側が分離直後の第1段、右側が燃焼中の第2段です」

はいぬっか(@hinzka)さんは、種子島から250km以上離れた熊本市内でブースターの赤い炎が見えたと投稿していた。

JAXAは打ち上げの前日から、見えたら「#ロケット見えた」をつけて投稿するよう呼びかけていた。観測結果の受け付けは打ち上げ後10日以内の予定だ。

積んでいたMMXは何をする探査機か

MMXは、火星の衛星からサンプルを持ち帰る世界初の計画だ。フォボスの2cm以上の深さから10g以上を採り、地球への帰還は2031年度を予定している。

フォボスの直径は約23km。火星の衛星にはもうひとつ、直径約12kmのダイモスがある。最初にフォボスへ降りるのはローバ(IDEFIX)で、探査機本体の着陸は2回の予定だ。

10号機は、H3ロケット初の惑星探査ミッションで、機体形態も初めて使う「H3-24L」だった。計画では、打ち上げの約1時間11分後にMMXを火星への軌道へ分離することになっていた。

ライブ中継では5時52分ごろに分離が確認されたと伝えられている。ただし記事を書いている時点で、JAXAからの正式な発表は確認できていない。

ひとつ前のH3ロケット9号機の打ち上げ(みちびき7号機)も明け方だった。今回はそこに、惑星探査という大きな仕事が乗った。

見かけた人は「#ロケット見えた」で

次にロケットを見る機会があれば、打ち上げ時刻と観測条件を確認しておくと、空の見え方が変わる。今回の案内はJAXAの特設ページにまとまっている。打ち上げ全体の情報はMMXとH3の特設サイトから読める。

夜光雲の仕組みはWikipediaの「夜光雲」に自然現象としての解説がある。MMXの詳しい計画はプレスキット(PDF)で見られる。

宇宙つながりで言うと、高校生が見つけた小惑星「ダイアンジ(Daianji)」の話も、由来がちょっとおもしろい。

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