意味不明と話題の「星屑ロンリネス」、正体は岩崎良美「タッチ」の歌詞
「良く考えなくても意味の分からない歌詞、41年連続1位」。この一行のあとに、全角スペースで1文字ずつ区切られた8文字だけが置かれたポストが、一日足らずで686万回表示まで伸びた。いいねは7.8万、リポストは4,200を超えている。
その8文字が「星屑ロンリネス」。言われてみると、確かに何のことだか分からない。星屑は分かる。ロンリネスも分かる。くっつけた瞬間に意味が消える。
出典は岩崎良美「タッチ」、歌詞に2回出てくる
出どころはアニメ『タッチ』のオープニング、岩崎良美の「タッチ」だ。歌詞を最初から追うと、歌い出しの4行目でもう出てくる。
呼吸を止めて一秒 あなた真剣な目をしたから そこから何も聞けなくなるの 星屑ロンリネス
名曲の歌い出しとして誰もが知っている3行のすぐ後ろに、何の前置きもなく置かれている。しかもこの語は曲中に2回出てくる。2回目は2番の「二人で肩を並べたけれど/星屑ロンリネス」で、終盤に歌い出しのブロックがもう一度くり返されるから、フルで聴くと合計3回耳に入る計算になる。
作詞は康珍化、作曲は芹澤廣明。1985年3月21日にキャニオン・レコードから岩崎良美の20枚目のシングルとして出て、フジテレビ系アニメ『タッチ』の第1期オープニングに使われた。1985年3月発売なので、2026年9月の時点で41年半。ポストの「41年連続1位」はもちろん冗談の言い回しだけれど、年数だけはきれいに合っている。
意味の答え合わせは、いまのところファン側にしかない
では星屑ロンリネスとは何なのか。作詞した康珍化さん本人が意味を語った記事は探しても見つからなかった。公式の答えが出ていない以上、出回っているのはすべて読み手側の解釈ということになる。
その解釈がけっこう似た方向に集まっているのがおもしろいところで、リプライ欄では夜空の見え方から説明する人が何人かいた。
夜空の星屑は地球からみると、互いにとても近くに並んであるように見える。星座とかがそう
しかし実際は手前と奥で互いの距離ははるかに遠い
星屑ロンリネスとは、幼馴染として近くにいたと思っていたのに、恋心が芽生えたら相手が遠くに感じてしまう孤独、つまりロンリネス…
かもしれない
星屑同士は近くの星だとしても果てしなく遠く離れてるからそれくらい距離を感じるほどの孤独感だよって意味じゃないかな
隣に並んで見えるのに、実際の距離はとんでもなく遠い。この2つはどちらも1,200いいねを超えていて、『タッチ』の達也と南の関係にそのまま重ねられるから、読み解きとしては筋が通っている。とはいえ本人の弁ではないので、あくまで「そう読んでいる人が多い」止まりだ。
自分の話として受け止めた人もいる。
お詫び
只今弊TLに
意味わからない歌詞「星屑ロンリネス」
といった旨がおバズりして流れていらっしゃったのですが、長年自認が星屑ロンリネスでした。大変申し訳ございませんでした。
「しゃかりきコロンブス」のほうには公式の答えがあった
この手の話になると必ず名前が挙がる兄弟ワードがある。今回いちばん伸びていた反応がこれだった。
「星屑ロンリネス」も「しゃかりきコロンブス」もそれぞれ元からある単語を組み合わせただけ。まったくない言葉を作り出した「風あざみ」に優るものはない……。
「しゃかりきコロンブス」は光GENJI「パラダイス銀河」(1988年、作詞・作曲は飛鳥涼)の歌詞で、こちらは意味がはっきり公表されている。「しゃかりきになって探したって、コロンブスさえも発見することができない夢の島」を表した言葉なのだそうだ。ついでに言うと、この曲も「タッチ」と同じく高校野球の応援で定番になっている。
もう一方の「風あざみ」は井上陽水「少年時代」の一節。こちらは陽水さんの造語で、風あざみという品種の植物は存在しない。本人が2009年にNHKの番組で、オニアザミという言葉が浮かんだときに「オニアザミがあればきっとカゼアザミもあるんだろうな」と思った、もし無くてもいい、辞書に無い言葉を歌詞に使ってはいけないという法律も無いのだから、という趣旨のことを話している。同じ曲の2番に出てくる「宵かがり」も同様の造語だ。
並べてみると、星屑ロンリネスだけがまだ本人の答え合わせを待っている状態にある。
意味が分からないまま金賞、そして国税局が「童謡ではない」と判定
意味不明とツッコまれ続けている割に、この曲の成績は立派だ。オリコン週間12位、1985年度の年間39位で、岩崎良美さんのシングルとしては最大のセールス。第27回日本レコード大賞では金賞を取っている。2020年にテレビ朝日で放送された『国民13万人がガチ投票! アニメソング総選挙』では5位に入り、2025年3月にはダウンロードでプラチナ(25万DL)が認定された。発売から40年経ってのプラチナ認定になる。
そしてこの曲には、税金がらみのややこしい過去がある。Wikipedia の記述によると、当時のレコードは収録曲が童謡と判断されれば物品税が非課税になった。そこで発売元のキャニオン・レコード(現在のポニーキャニオン)は、アニメの主題歌である「タッチ」を童謡扱いで売っていた。ところが1986年、東京国税局が「番組とは独立して聴ける若者向けの曲」と判定し、このレコードにも物品税がかかるようになった。出典は1986年6月13日付の日本経済新聞朝刊だ。
つまり、歌詞の意味は41年たっても確定していないのに、「これは子ども向けの童謡ではない」という点だけは国税局がはっきり結論を出している。答えが出た部分の選び方がおかしい。
2026年には稲葉浩志がカバーして、ダウンロードで1位を取った
この曲がいま改めて回っている理由はもうひとつある。2026年のワールド・ベースボール・クラシックで、Netflix の大会応援ソングとして稲葉浩志さんが「タッチ」をカバーしたことだ。3月に配信限定シングルとして出て、3月18日公開のBillboard Japan Download Songsでは42,231ダウンロードで1位。東京ドームのチェコ戦で初披露され、岩崎良美さんも「とても感激しました」とコメントを出している。
41年前に書かれた8文字が、いまだに「なんて言った?」で検索され、同時にダウンロードチャートの1位にも乗っている。曲名や歌詞が分からないまま頭に残るパターンは今でもよく起きていて、最近だとスティールボールランのオープニング曲や大雨の船に流れていた曲が同じように探された。80年代から現役でチャートに乗り続ける例としては、1983年から数えてTHE ALFEEの60作連続トップ10という記録もある。
ついでに言うと、「タッチ」には未採用に終わった別バージョンの歌詞が存在すると芹澤廣明さんが明かしている。そちらに星屑ロンリネスが入っていたのかどうかも、いまのところ誰も知らない。次にカラオケで入れる人がいたら、2回目がどこで来るか数えながら歌ってみてほしい。