ジャンプ+「ノイズリング」は2052年の深海SF、主役は盲目のソナーマン宿木
火曜の0時すぎ、原作者の安芸勘谷さんが「ノイズリング第4話配信されました!」と投げた。添えたのは「よろしくお願いします🌊」の一行だけ。深海マンガの更新告知としては、これ以上ないくらい短い。
少年ジャンプ+の新連載『ノイズリング』は、9月1日に第1話が出てからちょうど4週目に入ったところだ。連載一覧ではまだ新顔だが、検索のされ方は「ノイズリング 2話」「ノイズリング 3話」と話数で追いかける形になっていて、読み始めた人が次を探しにきているのが分かる。
舞台は2052年、静岡大震災から1か月後の海底
ジャンプ+のあらすじ欄は、「〝彼ら〟は実在する」の一行から始まる。続きはこうだ。「静岡大震災から1か月。海洋を調査する『JANSTEC』は大震災の原因を探るべく、海底断層の観測を実行する。ソナーマンである盲目の青年・宿木は有人深海調査艇の航行をサポートするが…」。
年代は作品ページには書かれていないが、配信開始のとき少年ジャンプ+の公式アカウントが出した紹介文に「2052年。」と明記されている。同じ投稿で作品は「未知が潜む深海SFサスペンス」と紹介されていて、ジャンル名も公式側から出ている形だ。この告知のいいねは2,900を超えていて、新連載の初日としては悪くない滑り出しだった。
つまり設定はこうなる。近未来の日本で大きな地震が起きて、その原因を探るために海底の断層を見にいく。そこで何かに出くわす。あらすじの一行目に置かれた「〝彼ら〟は実在する」が、最初からわりと不穏だ。
主人公が「盲目のソナーマン」なのがこの作品のキモ
ソナーマンは、音で海の中を把握する役割だ。潜水艦ものでよく出てくる、ヘッドホンを付けて反射音を聞いている人を思い浮かべればいい。目で見るのではなく、返ってきた音の形で「そこに何があるか」を読む。
その席に座っているのが盲目の青年というのが、この作品の作りのうまいところだ。深海は光が届かないので、そもそも誰にとっても真っ暗で、目が見える人の優位がない。逆に音を読む力がそのまま戦力になる。タイトルの「ノイズ」も、ソナーが拾う雑音を指していると読むのが自然な並びになっている。
作中の『JANSTEC』は、実在するJAMSTECと1文字違い
作中で海を調べている組織は『JANSTEC』。現実にも、ほぼ同じ綴りの機関がある。海洋研究開発機構、英語略称JAMSTECだ。Mが1文字Nに変わっているだけで、やっていることも海洋調査で重なる。
そのJAMSTECが運用している有人潜水調査船が「しんかい6500」で、名前のとおり最大潜航深度は6,500m。乗るのはパイロット2名と研究者1名の計3名だけで、一度潜ると数時間は外と切り離される。あらすじに出てくる「有人深海調査艇」でイメージするなら、だいたいこの規模の乗り物になる。3人で真っ暗な海底に降りて、頼りになるのは音だけ、という状況設定がどれくらい閉じているかが分かると思う。
原作の安芸勘谷は、5年前も深海の読切でルーキー賞を取っている
原作の安芸勘谷さんは、もともとジャンプ+で自分で描いていた人だ。連載作の『ムシムスメ』は完結済みで、単行本は全3巻。人と蟲が対立する世界の話で、深海とは何の関係もない。
面白いのはその前だ。ジャンプ+に載っている読切の一覧をさかのぼると、2021年4月23日公開の『深海とごちそう』という作品が出てくる。タイトルの後ろに「2021年3月期ブロンズルーキー賞」と付いていて、ジャンプルーキー!の月間賞を取った回だ。あらすじは、深海調査員のジロウが仲間2人と海中事故で遭難し、食料が尽きていくなかで、亡くなった船長を食べようという提案が出る、というもの。
深海、調査員、遭難、閉じた船の中。材料がかなり重なっている。5年前に短い読切でやった題材に、今度は作画を別の人に任せて連載で戻ってきたわけだ。
作画の翼さんは、第4話の公開から1時間ほど後に「ギエンさんと宿木」と添えた1枚を上げている。
「本格派のクトゥルー神話」と読んだ人もいる
第1話が出た直後、読んだ人からは「本格派のクトゥルー神話でこれは期待が持てる。ラヴクラフティアンは必読」という感想のポストも出ていた。深海、古い何か、閉じた船内という並びから、そう受け取る読者がいるのは分かる。
ただ、これはあくまで一読者の読みだ。公式が使っているジャンル名は「深海SFサスペンス」で、集英社側も作者もクトゥルフ神話をベースにしたとは言っていない。ここは第5話以降を読んで各自で答え合わせする部分になる。
更新は毎週火曜の0時。今なら第一話から第四話までで、追いつくのに大した時間はかからない。深夜に読むのはおすすめしないけれど。
新連載つながりだと、19年ぶりに名前が戻ってきた「ヴァンパイア十字界 犬には犬の歌」の記事もある。逆に長期連載の終わり方が気になる人は「僕の心のヤバイやつ」最終回、中国発Web小説の日本版漫画化なら「人渣反派自救系統」のコミカライズをどうぞ。