「ぬい整形」でぬいの首にくびれを作る縫い方が15万いいね、失敗しても糸を解けば戻る
推しのぬいぐるみを眺めていて、頭と体の境目がもうちょっとキュッとしてたらな、と思ったことのある人はけっこういるはずです。その願望に縫い針一本で答える手順が、8月31日にぬい活勢のタイムラインを流れていきました。
投稿したのは「此花工房」(@konohana_kobo)。ちいかわのマスコットぬいぐるみを使って、首にくびれを作る縫い方を4枚の解説画像に描いています。1枚目がビフォーアフターの比較で、アフターのほうは頭と胴の境がきちんと絞られ、輪郭まで丸く整って見えます。
投稿時刻は同日の13時5分。翌9月1日の朝にはいいねが10万を超え、表示は1,000万回超え、ブックマークは8万5,000を上回りました。9月2日時点では15万いいねに達しています。ブックマークがいいねの8割というのがこの投稿らしいところで、眺めて終わりではなく、あとで自分の手でやるために保存した人がそれだけいたということです。
首の縫い目を波縫いでぐるっと一周させるだけ
やっていること自体は拍子抜けするくらい単純でした。画像には「首の縫い目に沿って細かく波縫いします」とあり、「一針一針丁寧に」という念押しの吹き出しが添えられています。頭と胴をつないでいる、もともとの縫い目をなぞる形です。
一周できたら「一周縫ったら軽く糸を引き玉留めします」。ここで力任せに絞らないのがコツのようで、「強く首を締めなくても軽くでOK」とわざわざ書かれています。中綿を抜くわけでも、切って詰め直すわけでもない。表面をぐるっと縫って、ほんの少し引き寄せる。それだけで頭と体の境目に線が入るわけです。
縫う位置は「首の下」ではなく、もともとの縫い目の上
リプ欄でいちばん多かった気づきがここでした。くびれを作ると聞くと、首まわりの好きな高さを自分で決めて絞るのだと考えてしまいます。実際には、頭と胴を縫い合わせてある既存の縫い目をそのままなぞるだけです。
読者の一人も「もっと、上と下とバランスをみながら下に…かと思いましたが縫い目上なのですね!」と書いていました。位置を自分で決めなくていいので、縫い目さえ見つけられれば迷うところがありません。ぬいによっては毛に埋もれて見えにくいので、指で首まわりをなぞって、段差のある線を探すところから始めることになります。
玉留めは背中の縫い目に埋めて隠す
雑にやると、玉留めのコブが首元に残って目立ちます。そこの始末まで描いてあるのがこの解説の親切なところで、「糸を玉留めし背中の縫い目から針を刺し」、「すぐ隣から針を出します」という2手を踏みます。そのうえで「ギュッと糸を引くと玉留めが縫い目に埋まって目立ちません」。
ぬい服を作っている人には当たり前の処理なのかもしれませんが、手芸に縁がないとまず思いつきません。仕上がりの差が出るのはたぶんここです。
玉留めが苦手なら、全部固結びでも同じ仕上がりになる
その玉留めでつまずく人向けの補足が、投稿の1時間45分後に出ています。「りんこ@ハンドメイド」(@rinko_hdmd)が、自分のぬいで工程を撮り直しながら書いたものです。
「玉留め玉結びがぐちゃっとなる民の私は結び目部分は全部固結びでやってる」とのことで、糸先を10センチほど残して固結びを3回。そこから2〜3ミリの間隔で波縫いして一周します。腕のあたりは布が重なって針が通りにくいので「5ミリ幅くらいで縫っても大丈夫」。針目の細かさで悩まなくていいのは助かります。
一周するときは、最初に残した10センチの糸先を縫い込まないように避けるのがポイントです。戻ってきたら根元をまた固結び3回。
隠し方も本家と同じ考え方で、結び目のすぐ横に針を刺して、少し離れたところから出し、糸を生地の中に通します。最後は「ぬいちゃんの毛を切らないよう気をつけながら5ミリくらいのところで糸カット」。
切りっぱなしの糸先が気になりますが、「もみもみもんであげたら糸先が中にするっと入っていく」そうです。最初に残した10センチのほうも同じように中へ入れて、全体を揉んで形を整えたら終わり。玉留めができるかどうかで諦める必要はない、という話になります。
押しつぶすとほっぺ、親指を押し込むとあごもできる
4枚目はおまけ扱いで、首以外の造形も紹介されています。「おにぎりみたいに上から押しつぶすと▲にほっぺができます」、それから「親指を首の縫い目に押し込むとあごができます」。どちらも針も糸も使わない、手だけの技です。
縫う前にまず押してみて、好みの顔を探すこともできます。気に入らなければ握り直せばいいので、こちらは試すハードルがかなり低い。
押されたぬいが「ぐえ…っ」となっている絵に反応が集まったので、此花工房さんは同じ日の夜に動画版も出しました。
引用リポストのビフォーアフターで一気に広まった
いいねの数だけ見ると、伸びたのは元の投稿ではなく引用のほうでした。同じ日の15時12分、@chibimido_(ちべさん)が「ありがとう、本当に、教えてくれて、ありがとう…」の一言に、自分のぬいのビフォーアフター2枚を添えて引用リポストします。2枚目では首に細いくびれが入っていて、同じぬいなのに顔つきの印象が変わっている。こちらのいいねは15万6,000を超え、元の投稿を追い越しました。
同じ日の夕方には、ちいかわの「古本屋さん」でやってみた報告も1万3,000いいねを集めています。投稿した「らっきょ」(@pamepamekyun)は「ぷくぷくほっぺでとてもかわいくなりました」と書いていて、首を絞ったぶん顔の下側に綿が寄って、頬がふくらんで見えるという副産物のほうを喜んでいます。
同じ日の夜にはTogetterにもまとめられて、こうした報告がひとところに集まっています。解説に使われているぬいは、頭頂部が栗色で、タグに「ちいかわ」のロゴが写っていることから、くりまんじゅうとみられます。Togetterのまとめでも、手で押されて「ぐえ…っ」となっているのを「くりまん先輩」と呼んでかわいがる反応が引かれていました。
本人が書いていた注意書きは飛ばさないでほしい
真似する前に読んでおきたいのが、投稿の本文です。手順の紹介と一緒に、注意書きが3行付いています。
「整形」という言い方も本人が書いたもので、そのうえで元から可愛いから好みの問題だ、と一行足しているのが効いています。針を入れる相手は自分の推しぬいなので、やるかやらないかを決めるのは持ち主だけ、という線引きです。
そもそもぬいぐるみは、同じ商品でも顔の刺繍の位置が一体ずつ微妙に違います。顔が上下逆に付いたエラー品を引き当てた報告が定期的にバズるくらいには個体差があって、ちいかわマーケットの良品基準にも、縫製品の特性上、表情や形状などに個体差があるとあらかじめ書かれています。もともと世界に一体だけの顔をしているわけで、そこに手を入れるかどうかが好みの話になるのは筋が通っています。
縫い方そのものは前からあった手当て
投稿の本文が「少し詳しく描いてみました」で始まっていることからも分かるとおり、これは新発明ではありません。ぬいぐるみに手を入れて見た目を整える行為はぬい整形と呼ばれていて、綿を動かして顔の立体感を出す手法は2014年のまとめにすでに出てきます。針と糸を使う段階も、ぬい服を作る人たちの間では前から知られていた処理です。
今回の投稿が刺さったのは、手順を4枚の写真に分解して、玉留めの隠し方という地味な仕上げまで描き切ったからでしょう。知られてはいたが、初心者がその通りに手を動かせる形にはなっていなかった、ということだと思います。
失敗しても糸を解けば戻る、というのが大きい
この技がここまで広まった理由は、たぶん見た目の変化より、後戻りできることのほうです。中綿をカットするわけでも、生地を裁つわけでもなく、表面を縫い縮めているだけ。うまくいかなければ糸を抜けば元の首に戻ります。
推し活まわりのグッズは、御簾ポーチのように買って揃えるものが多いなか、これは家にある針と糸で今夜すぐ試せて、しかも気が変わったら引き返せる。手持ちのぬいの首を見比べて、しっくりこないなと思っていたなら、まずは指で押すところからやってみてください。