「ポポーポポポポ」とは?元ネタはスーパーの「呼び込み君」、曲名と歌詞を解説
スーパーの鮮魚コーナーに入った瞬間に鳴っている、あの明るいループ。文字で書きようがないので、みんな聞こえたまま 「ポポーポポポポ」 と打つようになりました。
「ポポーポポポポ」とは?
誰かが付けた正式な曲名ではなく、メロディの聞こえ方をそのまま文字にしたネット上の呼び名です。「スーパーのあの曲」「ポポーポポポポ♪」で検索する人が多いのも、名前が無いまま全員が知っている曲だからです。
正体は、群馬県みどり市の群馬電機が作っている販促用の音声POP「呼び込み君」の内蔵BGM。人感センサーでお客さんを感知して「タイムセールです」などと喋る、白くて顔の付いた箱です。長く売られてきた本体の内蔵曲は2種類で、落ち着いたボサノバ調が「No.2」、アップテンポで有名なほうが 「No.4」。ポポーポポポポと呼ばれているのは後者です。曲名は付いておらず、開発時の通し番号がそのまま呼び名になっています。
実物の音は、共同通信の報道映像で聞けます。売り場で鳴っている状態がそのまま入っています。
ちなみに、この曲の著作権は群馬電機が持っています。ネットのあちこちで鳴っているので勘違いされがちですが、フリー素材ではありません。
元ネタ・由来
企画が動き出したのは1999年の夏です。当時の売り場は案内の音声をカセットテープで流していて、大手スーパーから「テープが伸びるので2ヶ月に一度交換している」という話が出ていました。そこで半導体メモリを使う方式に切り替えることになり、2000年2月に試作1号が完成します。
問題になったのがBGMでした。既存の曲を入れると権利の処理が必要になるため、自前で作る方針に決まります。発注先は県内の企画会社に所属していた作曲家で、依頼から約1ヶ月で候補曲が上がってきました。ボサノバ、ロック、アップテンポ、スロー、サンバ、民謡といったジャンル違いを並べ、プロジェクト内の多数決でボサノバ調(No.2)とアップテンポ調(No.4)の2曲が残った、というのが群馬電機の開発秘話に書かれている流れです。作曲家の氏名は公表されていません。
なお、候補曲が何曲あったかは資料によって食い違っています。開発秘話は6曲、2026年に群馬電機が出したプレスリリースは7曲。落ちたほうの曲の話は「もっと!呼び込み君」9月17日発売、26年ボツにされていた“幻の5曲”がついに解禁されるで詳しく追いました。ボツ曲のなかに民謡調が入っているらしい、というあたりが読みどころです。
売り場の裏方から、商標を持つ資産へ
権利対策として作られた曲が、20年かけてじわじわ知られていきます。出荷台数は開発秘話によると2018年時点で累計4万台。声を出しての呼び込みが難しくなった時期に機械そのものの需要も伸び、2024年5月放送のテレビ東京「何を隠そう…ソレが!」では累計7万台以上と紹介されています。
ネット側での節目もいくつかあります。2020年10月31日にはリズムゲーム『D4DJ Groovy Mix』に収録されました。2021年5月の静岡ホビーショーでミニ版の試作品が公開されるとSNSで一気に広まり、同年10月の予約受付では希望小売価格792円のミニ版が4日で完売、12月に発売されています(東京新聞)。
そして2022年9月1日、このメロディが音商標として登録されました。登録第6608744号です。INPITの群馬県知財総合支援窓口の資料によると、歌詞の無いメロディだけの音商標としては当時全国で5例目、中小企業では初の登録でした。権利でもめないために自作した曲が、今度は守る側の資産になったわけです。
ちいかわの体操の曲としても知られている
もうひとつの入口がアニメ『ちいかわ』です。2023年2月3日放送の第44話「寝起きの体操」に、このメロディが体操の曲として登場します。ちいかわの世界では、あれはラジオ体操のポジションなんです。
この体操シーンを海外のユーザーが投稿したことから2026年8月に再燃し、日本語圏から「この曲って海外の人たちは日本のスーパーで客の頭を洗脳するために流す曲って知ってるのかな?」というツッコミが入って7万いいねを超えました。しかも引用欄には韓国・台湾・タイ・中国・インドネシアから「うちの国だとこれ」と各国のスーパーBGMが集まり、品評会になっています。この顛末はちいかわの体操の曲の正体はスーパーの「呼び込み君」、韓国・台湾・タイと各国版が集まってきたにまとめました。
「社会に揉まれ 都会に飲まれ」の歌詞は原曲には無い
「ポポーポポポポ 歌詞」で検索している人向けに書いておくと、原曲に歌詞はありません。あるのはメロディだけです。
にもかかわらず「社会に揉まれ/都会に飲まれ/親の偉大さを知る/ひとり泣く/ワンルーム/自分を信じて I can do it」という歌詞を思い浮かべる人が多いのは、TikTokやインスタのリールで替え歌が広まったからです。遅くとも2022年6月には流通していたことが確認できますが、誰が最初に付けたのか、いつ生まれたのかは確定的な記録が残っていません。複数のバージョンが出回っている、ネット発の二次創作という扱いになります。
歌詞が無いメロディに歌詞が生えて、そっちが本家だと思われていく流れは空耳とよく似ています。空耳が「別の言葉に聞こえる」なのに対して、こちらは「聞こえていないものを足す」という違いはありますが、たどり着く場所は同じです。短いループでクセが強い曲なので、素材としての使い勝手もよく、音MADの材料としても長く回されてきました。
使い方・例文
- 「ちいかわの体操の曲、あれポポーポポポポじゃん」
- 「スーパー入った瞬間にポポーポポポポ聞こえてきて謎に落ち着く」
- 「着信音ポポーポポポポにしたら、鳴るたびに鮮魚コーナーが始まる」
- 「ポポーポポポポの歌詞、あれ本物じゃないって今知った」
「呼び込み君」「No.4」と正確に呼ぶ人は少数派で、会話ではだいたい擬音のまま通ります。曲名を知らなくても全員に伝わる、という珍しいタイプの言葉です。
関連する言葉
体操シーンから広まったという意味で、入口はハチワレたちのちいかわ構文やセイレーンと同じ『ちいかわ』人気です。ただしポポーポポポポは作品より20年以上前から鳴っていた音で、アニメ経由で正体を知った人のほうが後発、という逆転が起きているのが面白いところ。曲の“正体探し”という点では空耳や音MADと地続きの遊びでもあります。