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「トーホービーズ」配色アプリ、名前がくすむ理由は辞書に無いから

トーホービーズの配色アプリで名前を入れると、色がくすみがち。辞書に無い言葉は文字から色を計算し、わざと落ち着いたトーンで塗る仕組みだからだ。

10月12日の夜、Xのトレンドに「トーホービーズ」が入った。20時5分時点のランキングでは4位まで上がっている。

きっかけは、広島のグラスビーズメーカー、トーホー株式会社が3日前に公開したWebアプリだ。

公式が作った配色アプリ

公式アカウントの@tohobeadsが投稿したのは10月9日の18時42分。「Y2Kガーリー」と打つだけで、ビーズの配色が完成するWebアプリを作りました、という告知だった。

投稿によると、6色のパレットと実在するトーホービーズの品番、さらに色相とトーンの分析まで一瞬で出る。22秒の動画付きで、いいねは3.6万を超えた。

アプリの名前は「COLOR STORY PALETTE」。ページには、場所・記憶・物語を5〜8色とトーホービーズの実品番に翻訳する、と書かれている。

実際の画面では2〜8色から色数を選べる。言葉を入れるとパレットができて、その色に近いビーズの品番が並ぶ。

名前を入れる遊びが広がった

公開から3日たって、遊び方が変わってきた。告知の例のような言葉ではなく、自分の名前や推しの名前を入れて色を見比べる人が増えている。

ヒプノシスマイクの左馬刻・銃兎・理鶯の名前を並べて、キャラごとの色を見比べる投稿もあった。推しの名前を入れたくなるのは、推し活をしている人ならだいたい分かると思う。

ところが、名前を入れた人からは少し引っかかる声も出てきた。

投稿の中では、こんなふうに書かれている。

  • 「全体的に濁ってません?くすみカラーってやつ???」

ほかにも、表記を変えると結果が変わるのに気づいた人がいる。

  • 「名前の間空けると変わるタイプか!」
  • 「漢字とひらがなだけでも違うんですね。」(@yama_07062912 さん)

くすむ理由はコードにあった

アプリのページはブラウザで動くプログラムでできていて、中身は誰でも読める。読んでみると、言葉の扱いは大きく2段階に分かれていた。

まず、辞書に載っている言葉には色が決めてある。辞書は手で作った約600項目と、取り込んだ約1,100項目で、合わせて約1,700語ある。

辞書に無い言葉でも、それが島や湖、温泉のような「何であるか」が分かれば、その分類の色を使う。コードのコメントには、それも分からないときだけ文字列から色を作る、と書かれている。

人の名前は、ほとんどがこの最後の段階に回るはずだ。

名前の色はこう計算されている

文字列から色を作る処理は短い。1文字ずつ文字コードを取り出し、それまでの値を31倍して足していく。最後に360で割った余りを、色相(色の種類を表す0〜359の角度)にする。

もう1色は、その色相から40度ずらしたものになる。2つの色には「面影の色」「残響の色」という名前が付いていて、パレットの説明は「この言葉だけの色」だ。

くすみの正体はトーンの指定にある。この処理は、配色の体系PCCSでいうソフト(sf)とダル(d)のトーンを優先するように書かれている。どちらも彩度を少し落とした、落ち着いた色の帯だ。

辞書に無い名前は、最初から少しくすんだ側に寄せて塗られる。「くすみカラーってやつ???」という感想は、仕組みのとおりだったわけだ。

スペース1つで色が変わるわけ

色相は文字コードの積み重ねで決まるので、入れる文字が1つ違えば結果は別物になる。漢字かひらがなか、姓と名の間にスペースを入れるかどうかでも、計算に使われる文字が変わる。

色が変わったという報告は、この計算の性質から来ているとみられる。逆に言えば、同じ表記を入れれば、誰がいつ入れても同じ色が出る。

推しの名前を試すなら、公式表記・ひらがな・ローマ字と入れ分けてみると、いちばん好きな色が見つかるかもしれない。

辞書にある言葉は作り込まれている

辞書に載っている言葉のほうは、かなり作り込まれている。告知の例に出た「Y2K」は年代の項目で、説明は「ミレニアムの光沢 — シルバーとベビーカラー」。

色はメタリックシルバー、ベビーピンク、スカイブルー、ライラック。ラスターやオーロラのような光る加工のビーズを好む設定まで入っている。

「ガーリー」は別の項目で、説明は「甘さをためらわない」。砂糖菓子のような桃色やクリーム、うすい藤色、ミントの水色を軸に組む。

年ごとの色もある。たとえば「2016」と入れると、ローズクォーツ(#F7CAC9)とセレニティ(#92A8D1)が出てくる。その年の流行色として知られる2色だ。年の色は2000年から2026年まで、1年ずつ用意されている。

ちょうど今年は2016年っぽさを懐かしむ流れもあったので、Y2Kと並べて試すと違いが分かりやすい。

色の元データは、トーホーの公式検索サービスに載っている実物写真から測った色と、トーホービーズのカタログだ。ほかに日本の伝統色266色と世界の色704色も持っている。

なお、ページのプログラムが読み込むのは、自前のビーズデータと作品データの2つだけだった。生成AIに毎回聞く作りではなく、事前に用意した辞書と配色理論で組み立てているとみられる。

作ったのは広島の老舗ビーズメーカー

トーホー株式会社は、広島県の紹介ページによると昭和26年に広島の三篠で創業したグラスビーズの会社だ。

原料の珪砂を1300℃で10時間以上溶かし、ガラスのストロー状の管を作ってから、ビーズの大きさに切って仕上げる。

作ったビーズは、オートクチュールのドレスやウェディングドレスの刺繍材料として、海外のハイブランドにも使われている。TOHO BEADS は広島市の「ザ・広島ブランド」にも認定されている。

手芸店でよく見る小さな丸いビーズの会社が、配色アプリでトレンドに乗った格好だ。会社の情報はトーホーの公式サイトにある。

自分の名前の色を見てみる

名前がくすむのは、アプリの調子が悪いわけでも、名前が地味なわけでもない。辞書に無い言葉に、落ち着いた色を当てる設計になっているだけだ。

街で見つけた色を集める色ハンティングと同じで、言葉から色を拾う遊びとして見ると面白い。自分の名前と推しの名前、並べて入れてみてほしい。

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