ジュンク堂三宮店の「AI翻訳がどんだけ便利でも」フェア、並ぶ本は柴田元幸訳
ジュンク堂書店三宮店の翻訳フェアの棚、写真で書名が読める本の訳者は5冊とも柴田元幸でした。
きっかけは、神戸在住のXユーザー「ローカル図鑑」さんが9月29日の昼に投稿した1枚の写真です。本文は「ジュンク堂三宮店ええな。」のひと言だけ。
翌朝の時点で、いいねは9万6,000を超えていました。
POPの一文が関西弁
写真に写っている店の掲示物には、こう書かれています。
「AI翻訳がどんだけ便利でもこの翻訳家さんの訳した文章がええんですよフェア」右下の署名は「ジュンク堂書店三宮店」。フェアの名前がそのまま主張になっていて、しかも関西弁です。
AI翻訳を悪く言っているわけではありません。便利なのは認めたうえで、「それでもこの人の訳がええ」と推しているだけです。
ただ、POPには肝心の翻訳家の名前が書いてありません。「この翻訳家さん」って誰なのか。答えは平台の本のほうにありました。
写っている本はこの5冊
写真に入っているのは平台の一部だけです。表紙や帯の下を拡大すると、4冊には「柴田元幸 訳」の文字が読めます。『高校のカフカ、一九五九』だけは訳者名が帯に隠れて写っていませんが、版元の白水社のページで柴田元幸訳だと確認できます。
- 『バウムガートナー』ポール・オースター(新潮社)
- 『高校のカフカ、一九五九』スティーヴン・ミルハウザー
- 『ナイフ投げ師』スティーヴン・ミルハウザー
- 『体の贈り物』レベッカ・ブラウン
- 『シカゴ育ち』スチュアート・ダイベック
著者はバラバラなのに、訳者の欄だけが全部同じ名前です。『シカゴ育ち』の帯には、柴田元幸本人が「自分が訳した中で最高の一冊」という趣旨の言葉を寄せています。
柴田元幸ってどんな人
柴田元幸は1954年、東京都生まれの米文学者・翻訳家です。東京大学の名誉教授で、文芸誌「MONKEY」の編集長も務めています。
講談社エッセイ賞、サントリー学芸賞、日本翻訳文化賞、早稲田大学坪内逍遙大賞を受けています。翻訳家としてはかなりの受賞歴です。
訳してきた作家は、オースター、ミルハウザー、ダイベック、レベッカ・ブラウンのほか、スティーヴ・エリクソン、バリー・ユアグロー、ピンチョン、マーク・トウェイン、ジャック・ロンドンなど。
海外文学の棚で「柴田元幸 訳」の文字を見かけたことがある人も多いはずです。三宮店のPOPが名前を出さなくても、本好きには棚を見ただけで誰のことか伝わる、というわけです。
新刊が続いたタイミング
この棚、ちょうど新しい訳書が重なった時期でもあります。
『バウムガートナー』は、新潮社が「ポール・オースター最後の長篇小説。」と紹介している1冊です。オースター(1947〜2024年)が遺した長篇の邦訳になります。
『高校のカフカ、一九五九』は、ミルハウザーの原書の短篇集を2冊に分けたうちの1冊目です。もう1冊は『幽霊屋敷物語』(仮題)として2026年に出る予定になっています。
『体の贈り物』は、レベッカ・ブラウンの代表作をtwililightが新装版で復刊したものです。著者の書き下ろし「『体の贈り物』三十年後」も入っています。
三宮はジュンク堂の始まりの店
POPを出したのが三宮店だったのも、ちょっと面白いところです。
honto の店舗ページによると、ジュンク堂書店が最初に店を開いたのは1976年、三宮センター街のビルの地下でした。つまり三宮店は、チェーンの一号店があった場所です。
創業の地の店が、関西弁のPOPで翻訳家を推しているわけです。
投稿者の「ええな」の続き
投稿者のローカル図鑑さんは、日付が変わったころにこうも書いています。
「明日ジュンク堂行って翻訳書を手に取ってくれる人が増えるとええな。」
AI翻訳が身近になったいま、訳者の名前で本を選ぶという楽しみ方は、若い読者にはむしろ新鮮かもしれません。「柴田元幸 翻訳 おすすめ」で探すなら、まずはこの棚の5冊から入るのが早そうです。
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三宮に寄ったら、平台をのぞいてみてください。