横浜の崖でよく見る「あみあみ」、名前は「法枠工」
横浜の崖でよく見る格子状の「あみあみ」は、法枠工(のりわくこう)という、斜面を守るための工法です。
きっかけは、イラストレーターのずどどんぱさん(@zudodonpa_zvw30)が10月5日の夕方に投稿した1枚。タイトルは「横浜にありがちな家(の裏側)」で、6日朝の時点でいいねは3万7,000を超え、返信も300件以上ついています。
絵に詰まった横浜あるある
描かれているのは、崖の上に細い柱で持ち上げられた家です。窓からは動物のキャラクターたちが顔を出していて、のんびりした絵柄なのに、書き込みのツッコミがいちいち具体的なんですよね。
絵の中のツッコミはこんな感じです。
- 「ランドマークタワーがみえる!! みなとみらい(の花火)がみえる!! でつられた人たち」
- 「たどりつくには なが〜い坂や階段をのぼらないといけない」
- 「これ地震大丈夫か?」
- 「外壁塗装とかどうするんだ?」
- 「みてるだけで不安になる」
眺望で選んだら、帰り道が毎日登山になるやつです。横浜に住んだことがある人なら、どこかの坂の途中で一度は見上げた景色だと思います。地元の人にとってのあるあるが、絵1枚にぎゅっと詰まっています。
そして崖の右側には矢印つきで「よこはまでよくみるあみあみ」の書き込み。さらに崖そのものには「法面」と書かれ、右下には黄色いトゲトゲの吹き出しで「土砂災害警戒区域」とあります。
あみあみの正体は法枠工
あの網目模様、正式には「法枠工」と呼ばれます。急傾斜地の対策工法の設計を手がけるジオテックの現場吹付法枠工のページでは、次のように説明されています。
地山に合わせて格子状の構造物を構築し、斜面の小崩壊や浸食を防止します。
つまり、斜面の表面をコンクリートの格子で押さえて、表面が少しずつ崩れたり雨で削られたりするのを止める工法です。
名前の「法(のり)」は、イラストにも書かれている「法面(のりめん)」の法です。法面は切土や盛土でつくった人工の斜面のことで、そこに「枠」をつける「工」事だから法枠工。読み方さえ分かれば、名前はそのまんまなんですよね。
同じあみあみでも作り方は色々
ひと口に法枠工といっても、ジオテックの工法メニューを見るとやり方は何種類かに分かれています。
- 現場吹付法枠工
- プレキャスト法枠工・軽量法枠工
- アンカー付法枠工
名前が「現場吹付」と「プレキャスト(あらかじめつくった部材)」に分かれているあたり、枠をその場でつくるか、できあがった枠を持ってくるかの違いが見えてきます。冒頭の写真は岡山県道300号線の法面で、斜面いっぱいに白い格子が並んでいます。
神奈川県の土砂災害特別警戒区域等についてのページでも、特別警戒区域に対する主な対策施設の例として、コンクリート張工や重力式擁壁工と並んで法枠工が挙げられています。
横浜に崖が多いのは地形のせい
横浜はとにかく坂と崖が多い街です。地形・地質の解説サイト「日本の地形千景」によると、横浜市には下末吉台地とそれに続く多摩丘陵が広がっています。
そこに帷子川や大岡川などがつくった谷が縦横に入り組んでいるので、平らな台地と谷が交互に並びます。その境目が急な斜面になるわけです。同じページでは、山手地区を「台地と谷戸(谷)の繰り返し」と説明しています。
高いところに建てれば、ランドマークタワーもみなとみらいの花火も見えます。その代わり、谷の底から台地の上まで登らないと家にたどりつけません。イラストの「なが〜い坂や階段」は、この地形をそのまま描いたものなんですね。
横浜市の警戒区域は2,374
横浜市の公式サイトの土砂災害防止法についてのページによると、令和8年2月17日現在、市内の土砂災害警戒区域は2,374区域、土砂災害特別警戒区域は2,057区域です。
神奈川県のページでは、横浜市内のがけ地の土砂災害警戒区域は平成25年度までに、特別警戒区域は令和3年5月までに指定を終えたとしています。市内のがけ地については、区域の線引きがひととおり済んでいるということです。
イラストの「これ地震大丈夫か?」は、絵の家が架空なので答えようがありません。実際の家や場所が気になるなら、横浜市の土砂災害ハザードマップで区域を確かめられます。
坂の街を歩いたら見上げてみて
格子の模様は、知らないとただの壁の柄に見えます。名前を知っていると、横浜の坂道を歩くたびに「あ、法枠工だ」と目に入ってくるはずです。
崖つながりでいうと、支笏湖の湖底が水際からいきなり崖になっている話も、地形のスケール感がおかしくて面白いので、あわせてどうぞ。