「激キモステップ」とは?元ネタ・曲名とピンクウィンドミルキッズの現在を解説
子どもが1人ずつ前に出て「Hi, my name’s ◯◯」と名乗り、名乗り終わると全員で同じステップを踏む。カクカクした動きと、微妙に間延びしたテンポが頭から離れなくなるあの映像です。日本では「激キモステップ」とか「性癖開示ステップ」と呼ばれていて、2026年の夏にかけて自己紹介テンプレとして一気に増えました。元ネタは1984年のイギリスの子ども番組で、流れている曲はヴィレッジ・ピープルの「Can’t Stop the Music」です。
「激キモステップ」とは?
10人の子どもが順番に自己紹介し、最後に全員でステップを踏む1980年代の映像を素材にしたミームです。日本での使われ方は、映像に映っている1人ひとりの枠を、自分の推しキャラや好きな属性に差し替えるというもの。10人ぶんの枠があるので、並べた瞬間にその人の趣味がまるごと露出します。「性癖開示ステップ」という呼び方はここから来ていて、実際に「ぼくは主従カプ!」とキャプションを付けて自分の好みを1枠ずつ並べる投稿が出回りました。
呼び名の「激キモ」は、映像の動きが妙に癖になるところをネットらしい言い回しでイジったものです。出演していたのは当時の子役なので、この記事では日本で定着した通称としてだけ扱います。中身を見れば分かるとおり、映像そのものは真面目に歌って踊っている番組の1コーナーです。
構造としては、フォーマットを借りて自分の情報を差し込む格付けミームと同じ遊び方になります。推し活まわりの語彙とも相性がよく、キャラ10人を並べて「この並びで察して」とやるのが定番の使い方です。
元ネタは1984年、イギリスの子ども番組
順を追うとこうなります。
- 1981年、ITVの新フランチャイズだったCentral Independent Televisionが、コメディアンのロッド・ハルにパペットの「エミュー」を使った幼児向け番組を持ちかけます。放送が始まったのは1982年1月5日で、番組名は Emu’s World。舞台はピンクの風車の家です。歌とダンスを担当した子どもたちがピンクウィンドミルキッズで、第1シリーズは Pattison College、それ以降は Corona Theatre School(当時の名称は Corona Stage School)から出ていました。
- 1984年の半ば、番組は20分から42分に拡大され、視聴者からの電話や観覧客を入れた生放送形式に切り替わります。名前も Emu’s All Live Pink Windmill Show に変わりました。
- 例の映像は、その改称後シリーズ1の第1話にあたる1984年7月13日放送分です。英語版Wikipediaも「最初の生放送回のクリップ」として、この日付とセットで記載しています。子どもたち自身は1982年から番組に出ていたので、初出演ではなく生放送になって最初の回、という位置づけになります。
- 曲はヴィレッジ・ピープルの「Can’t Stop the Music」。1980年の同名映画の主題歌で、原曲を知っている人ほど「その曲で踊ってたのか」となります。
自己紹介する10人の名前も分かっています。Catrina Hylton、Hugh Harper、Sarah Jeffs、Emma Whitlock、Joe Greco、Spencer Roberts、Lorraine Plummer、Anthony Hosier、Debbie Harper、Abbie Shilling の10人です。
日本語で書かれた解説には、事実と違う説明がけっこう混ざっています。よく見かける3つを直しておきます。子どもは5人ではなく10人、番組はアメリカではなくイギリス(ITV)、そしてEmu’s World の1コーナーではなく、改称後の Emu’s All Live Pink Windmill Showです。Emu’s World は同じ枠組みの前身番組にあたるので、完全な間違いというより世代がひとつ古い、という話になります。
英語圏では「Hi, My Name’s Catrina」
海外で火が付いたのは2016年11月27日です。Facebookページ「Instant Regret」が、この映像に “When a new person starts at work”(職場に新人が入ってきたとき)というキャプションを付けて投稿し、1100万再生・8.8万リアクション・22.3万コメントまで伸びました。以降、英語圏ではトップバッターの子の名乗りを取って Hi, My Name’s Catrina と呼ばれています。日本の「激キモステップ」とは名前がまったく違うので、英語で調べるときはこちらで検索したほうが早いです。
2017年、本人たちが大人になって再現した
ミーム化から数か月後の2017年、イギリスのチャリティー団体 Comic Relief(Red Nose Day の主催)の企画で、当時の子どもたちが大人になって同じ振り付けを再現しました。上の動画がその公式映像で、2017年2月28日公開、463万回再生されています。集まったのは10人のうち9人で、スペンサー・ロバーツさんは都合がつかず参加していません。
面白いのは、並び順も名乗り方も33年前とほぼ同じでやりきっているところです。ミームとして拡散されたあとに本人たちが乗っかった例としては、かなりきれいな着地だと思います。「あの子たちは今どうしてるの」という疑問に、本人たちが動画で答えてしまった形です。
日本で広まったのは2026年6月
日本での流行は2026年の春から夏にかけてです。2026年4月6日の時点で「通称激キモステップ」という書き方がXで確認できるので、呼び名自体はそれ以前から流通していました。6月21日に元ネタの解説投稿が出て、その翌日には「呼び名は『性癖開示ステップ』が定着したらしい」という投稿が続きます。素材化された動画が出回ったのも6月中旬から下旬に集中していて、この時期が日本での波のピークでした。
ただし、日本で誰が最初に「激キモステップ」と呼び始めたのかは、確定的な記録が残っていません。4月時点ですでに説明抜きで通じる通称になっていたので、名付けの瞬間をたどるのは難しい状態です。「性癖開示ステップ」への呼び名の移行も、個人の観測が根拠になっています。
使い方・例文
- 「激キモステップで推し10人開示したら情報量やばくなった」
- 「性癖開示ステップ、並びで全部バレるのやめてほしい」
- 「元ネタ調べたら1984年のイギリスの子ども番組でびっくりした」
- 「Hi, my name’s のところだけ無限に頭で流れてる」
関連する言葉
動きに名前が付いてテンプレ化する型では、二本足でゆらゆら揺れるやんのかステップが近い親戚です。こちらは白猫がやってのけた動画から広がりました。曲の中毒性と振り付けがセットで拡散した例としてはSWEET STEPも同じ流れにあります。
英語圏で先に流行ったものが数年遅れで日本に来る、という時間差もこのミームの特徴です。元映像が1984年、海外でのバズが2016年、日本での流行が2026年。42年越しで自己紹介させられている10人のことを、ちょっとだけ思い出してあげてください。