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「名乗れよ おい、参加したいですか?」の元ネタ、SkidStormの名前入力画面

名乗れよ(おい、参加したいですか?)(なのれよ) ・ 2026年9月12日 公開

ゲームを起動したら、いきなり「名乗れよ」と凄まれる。びっくりして本文を読むと、今度は「参加したいですか?」と敬語で聞いてくる。同じ画面の中で態度が二転三転するこのダイアログが、7年近くネットで擦られ続けています。

「名乗れよ おい、参加したいですか?」とは?

スマホゲームの名前入力画面に出た、日本語訳が壊れた文面がそのままミームになったものです。プレイヤーにニックネームを入れさせたいだけの、どのゲームにもある平凡なダイアログなのに、訳し方のせいで急に絡まれているような文章になっている。

実際に出ていたのがこれです。

本文は画面上だと「先 自己 してく」で行が折り返して「ださい:」に続くので、単語の途中で改行が入っています。空白の位置も原文のままで、直すとミームとして成立しなくなるやつです。

面白がられているのは、1画面のなかで口調が3回入れ替わるところ。見出しの「名乗れよ」は完全な命令形、次の「おい、」で呼びかけがタメ口になり、その直後に「参加したいですか?」と丁寧語に戻る。しかも入力欄のプレースホルダは「氏名を入力してください」で、ここだけ役所の書類みたいに落ち着いている。怒っているのか丁寧なのか最後まで分からないまま、下の「はい」を押すしかない。

背景のUIも同じ調子で崩れていて、メニューには「キャリアモード」「タイムトライアル」「友達対戦」「ガレージ」「宝箱スロット」「プレー」が並び、その横に「を獲得することができます 2つの黄金の賞杯」という、語順が丸ごと裏返った一文が置かれています。どこか1カ所の訳ミスではなく、ゲーム全体がこのテンションで訳されていたわけです。

元ネタ・由来、SkidStormという配信終了したレースゲーム

元ネタは『SkidStorm』というスマホ向けのレースゲームです。開発・配信はCheetah Games(Cheetah Mobileのゲーム部門)。TapTapでのリリースは2016年10月26日で、日本のアプリ紹介サイトアプリゲットに掲載されたのが2017年12月21日です。ミームの印象が強すぎて架空のゲームだと思っている人もいますが、ちゃんと実在します。

そして日本語圏に見つかったのが2019年11月10日。@AlisalLoveCOCOA(現在は @NoMercyExcel、アカウント自体は同一)が問題の画面を撮って「名 乗 れ よ」とだけ添えて投稿したところ、3万1,388いいねまで伸びました。確認できる範囲では、これが日本語での最初の拡散です。

翌11月11日にはGIGAZINEの日刊ヘッドラインに拾われ、11月12日にはenogeが記事にしています。バズった当日のうちにまとめ系が動いた形で、当時からネタとしての完成度は認められていたことになります。

ここからが少しややこしい話で、このゲームは今からでは遊べません。2020年2月、Googleが「妨害的な広告」を理由にAndroid向けアプリ約600本を一斉に削除し、Cheetah Mobileのアプリ群がまとめてPlayストアから消えました(BuzzFeed News / Android Police)。SkidStormが単体で名指しされた記録は見当たらないので、正確には作品ではなく開発元ごと棚から消えたということになります。TapTapに残っているアプリ情報も最終更新が2019年4月8日で止まっていて、アプリゲットの紹介ページには「現在、ダウンロード先を確認できません」と出ます。元ネタの画面を自分で出して確かめる、というのはもうできません。

なお、ニコニコ大百科には開発をフィンランドのImmobile Gamesとし、のちにCheetah Mobileが買収したという記述もありますが、一次情報では裏が取れませんでした。ここでは配信元がCheetah Gamesだったところまでにとどめておきます。誤訳が機械翻訳によるものかどうかも、公表されたことはありません。

2024年と2026年、二度の再燃

一度バズったネタがそこで終わらなかったのがこの語の特徴です。2024年12月10日、@sha_shin_chyp が同じ画面を「この手のだとこれが一番優勝」と再掲したところ、5万6,134いいね。初出を上回る第二波になりました。

そして2026年に三度目が来ます。8月15日にニコニコ大百科へ「名乗れよ おい、参加したいですか?」の単語記事が新規作成され、9月1日には、この文面をそのまま言い換えた件名のメルマガのスクリーンショットが拡散して3万1,330いいね。翌2日に出たニコニコ大百科のHOTワード(集計期間は8月26日〜9月1日)では、この語がランク外から一気に8位に入りました。スコア14.9bp、ユニーク率94.1%、そして流入の99%が検索です。

この99%という数字が地味に効いていて、要するにほとんどの人がどこかで文面を見て、意味が分からず検索したということになります。ミームとして知っていて読みに行った人ではなく、初見で戸惑った人の流入。10年前に出たゲームの誤訳が、いまだに新規の「何これ」を生み続けている。

使い方・例文

使い方は単純で、丁寧なのか怒っているのか分からない文章に出くわしたときに「名乗れよ」と返します。自動翻訳のUI、雑に作られたフォーム、テンションのおかしい通知文あたりが主な出現ポイントです。

  • 「海外通販のサイト、確認ボタンが『はい 買います あなた』になってて名乗れよ案件だった」
  • 「バイト先の新システム、エラーが『おい、やり直してください』みたいな口調で笑う」
  • 「自己紹介しろの一言が『名乗れよ』なのマジで怖い」

会話の相手に向けて「名乗れよ」と言うと普通に喧嘩を売る言葉になるので、そこは注意。ネタとして機能するのは、あくまで機械が書いた文章に対して使う場合だけです。

「おい、参加したいですか?」の側は、誘い方が矛盾している場面に転用されます。飲み会の告知が強制参加っぽいのに末尾だけ「ご検討ください」で終わっている、みたいなときの返しとして便利です。

ちなみに、日本語が短く詰まる言語だというのはゲーム翻訳の現場ではよく知られた話で、「装備」が英語だとEquipmentになるという桜花一門さんの投稿がバズったこともありました。文字数が合わない中で機械的に訳語を当てはめていくと、SkidStormのような事故が起きる。逆に、AWS BuilderCardsの日本語版を有志のワーキンググループが3年かけて訳した話を見ると、人の手が入ったローカライズがどれだけ地味な労力の上に乗っているかが分かります。

関連する言葉

翻訳調の不自然な日本語がそのままミームになった例としてはボブは訝しんだが有名です。あちらは翻訳文体を真似したファンが自分で作った構文で、こちらは本当に訳を失敗した画面。人工的に作った翻訳っぽさと、天然の翻訳っぽさの違いだと思うと分かりやすい。

ゲームの何気ない一言が本編から独立して生き残るという点ではそんな装備で大丈夫か?と同じ型です。ただしエルシャダイはセリフとして意図的に作られたもので、SkidStormのほうは誰も狙っていません。狙っていないのに7年ずっとネタにされ続けているぶん、こちらのほうが業が深い気もします。

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