「炭酸抜きコーラですか…たいしたものですね」の元ネタは刃牙1話、言ったのは名無しのメガネ
「ほう…炭酸抜きコーラですか…たいしたものですね」は、板垣恵介の漫画『グラップラー刃牙』第1話に出てくるセリフです。言ったのは主人公でも対戦相手でもなく、名前すら付いていないメガネのモブでした。
試合前にコーラを飲んでいる少年を見て、頼まれてもいないのに栄養学の解説を始める。この2ページほどのやり取りが、30年以上たった今もコラや改変ネタとしてXに流れてきます。
「炭酸抜きコーラ」とは?
ネットで「炭酸抜きコーラ」と言うと、飲み物の話ではなく、たいていこの刃牙のワンシーンを指します。「ほう◯◯ですか…たいしたものですね」という言い回しごと使われるのが普通です。
笑いどころは、メガネの解説がやたら早口で、しかも誰も聞いていないところにあります。周りの観客は「オイオイオイ」「死ぬわアイツ」と刃牙の負けを予想していて、メガネだけが補給食の分析に夢中になっている。この温度差がそのままネタになりました。
同じ場面から生まれた「オイオイオイ」「死ぬわアイツ」とセットで語られることが多く、どれも聞けばすぐ刃牙だと分かる定番です。名無しのモブが作品を代表するセリフを持っていった珍しい例でもあります。
元ネタ・由来
舞台は神心会の空手大会です。白帯で出場した範馬刃牙が、決勝を前にした控室で、特大タッパに入ったおじやとバナナ、梅干し、そして炭酸を抜いたコーラを次々に口へ運びます。
それを見ていた観客がまず「オイオイオイ」「死ぬわアイツ」とざわつく。そこへメガネの男が割り込んで、「ほう炭酸抜きコーラですか…たいしたものですね」と感心してみせます。続けて、炭酸を抜いたコーラはエネルギー効率がきわめて高く、レース直前に愛飲するマラソンランナーもいる、と説明を始めました。
周りの「なんでもいいけどよォ」「相手はあの末堂先輩だぜ」という反応はまったく耳に入っていません。
メガネはおじやとバナナを即効性のエネルギー食と評し、梅干しで栄養バランスまで取れていると褒め、最後は試合直前にあれだけ食べられる消化力を「超人的」とまで言い切ります。
この間、刃牙本人は一言も発さず黙々と食べているだけです。
このメガネの立場は資料によって書き方が揺れています。ニコニコ大百科は神心会の黒帯の門下生としていますが、後で触れる佐賀県とのコラボでは「控室に刃牙を呼びに来た人」と紹介されたとされます。はっきりしているのは、作中で名前が出ないことくらいです。
上は刃牙シリーズの公式YouTubeチャンネルが2025年2月21日に公開した、第1話をフルリメイクしたマンガ動画で、タイトルには「炭酸抜きコーラが帰ってきたッッ」の文字が入っています。概要欄にも「元祖炭酸抜きコーラは『グラップラー刃牙 1話』からッ!」と書かれていて、公式もこの場面を作品の顔として扱っています。再生数は100万回を超えました。
なぜミームになったのか
ニコニコ大百科の「オイオイオイ」の項目では、流行の理由として次のような点が挙げられています。
- 聞かれてもいないのに急に解説を始めるモブのキャラが強い
- 「エネルギーの効率がきわめて高いらしく」という、本当かどうか分からないスポーツ知識
- 2ページで話が完結していて、切り出しやすい
形がきっちり決まっているので、単語を入れ替えるだけで別のネタになります。改変の型はだいたい次の2つです。
- 「ほう◯◯ですか…たいしたものですね」
- 「◯◯はエネルギーの効率がきわめて高いらしく、◯◯する◯◯もいるくらいです」
ふたば☆ちゃんねるやXでは、メガネの顔はそのままに飲み物や食べ物を差し替えたクソコラがよく作られました。Twitterで広く使われ出したのは2016年ごろからとされます。原作の台詞をほとんど残して文脈だけずらす遊び方は、寄生獣コラとも近い作りです。
公式側も乗っかっていて、佐賀県とバキのコラボではメガネが佐賀の日本酒を語ったとされています。2021年7月にはサントリーの「THE STRONG 天然水スパークリング」とアニメ『範馬刃牙』のコラボ動画『バキバキ名言』篇があったともいわれます。炭酸水の広告に炭酸抜きコーラのネタを持ってくるのは、なかなか攻めた組み合わせです。
いちばん新しい例は入浴料で、バンダイのびっくらたまご 刃牙は香りが炭酸抜きコーラです。2026年11月16日の発売予定で、お湯の色は茶色。シリーズのアニメ展開も続いていて、烈海王の異世界転生スピンオフもアニメ化が決まっています。
炭酸抜きコーラは本当に効くのか
メガネの解説には、一応それらしい元があります。Wikipediaの「フランク・ショーター」の項目によると、1972年ミュンヘン五輪のマラソンで金メダルを取ったショーターが、給水用のスペシャルドリンクに炭酸を抜いたコーラを使ったことがあるとされています。
ただし同じ項目には、マラソン解説者の金哲彦がレースで実際に試したところ、コーラは甘くてべとつくので喉が渇いているマラソン中に飲むのは向いていなかった、という記述もあります。どちらも脚注の無い記述なので、話半分で読んでおくのがよさそうです。
同じ項目には「今だとカフェインがドーピング規定に引っかかる可能性がある」とも書かれていますが、カフェインは2004年に世界アンチ・ドーピング機関(WADA)の禁止表から外れていて、今は監視プログラムの対象です。コーラ1本で失格、という話にはなりません。
使い方・例文
誰かが妙にこだわった食べ物や飲み物を選んでいるときに、感心したふりをして返すのが基本の使い方です。
- 「ほう…ゼロカロリーコーラですか…たいしたものですね」
- 「ほう…MAXコーヒーで徹夜ですか…たいしたものですね」
- 「エナドリはエネルギーの効率がきわめて高いらしく、締め切り直前に愛飲する大学生もいるくらいです」
友達がテスト前にラムネを大量に買い込んでいたら、メガネ役になって解説してあげると伝わります。元ネタを知らない相手には、ただの早口な人に見えるので注意してください。
関連する言葉
同じ控室の場面からは「オイオイオイ」「死ぬわアイツ」が生まれていて、文章ごと貼る使い方はコピペの一種として扱われています。長い定型文を改変して遊ぶ点では吉野家コピペと同じ系統です。
画像を加工する遊び方はクソコラ、原作の台詞を生かして文脈だけ変える型は寄生獣コラが近い仲間です。名前の無い脇役が主役を食ってしまう構図は、モブという言葉の使われ方ともよく重なります。