「宇宙猫」とは?元ネタははっきりせず、日本で広まったのは2014年ごろ
「宇宙猫」は、宇宙空間の写真に猫を合成したコラ画像のことです。理解が追いつかないものを見たときのリアクションとして貼られます。
で、毎回みんながつまずくのが元ネタです。結論から言うと、どこ発祥なのかは確定していません。海外には2006年の1枚があり、日本で広まったのは2014年ごろ。その間がつながっていないままです。
「宇宙猫」とは?
星空や銀河の写真をバックに、猫を切り抜いて貼り付けた面白画像です。「スペースキャット」とも呼ばれます。
使いどころは「意味が分からなすぎて処理が止まった」瞬間。自分の理解を超える出来事に遭ったときや、何かを悟ったときに貼られます。「宇宙猫になる」「宇宙猫状態」「宇宙猫顔」と動詞や名詞に化けて使われるのもこの語の特徴です。
素材になる猫の写真にも定番があります。
- 驚いたように目を見開いた表情(定番)
- あくび中の写真を使って、星を吐き出しているように見せる
- 床で伸びをしている写真を使って、宇宙空間を飛び回っているように見せる
壮大で無機質な宇宙と、身近でかわいい猫。噛み合わない2つを合成した意味不明さがそのまま面白さになっているタイプのミームです。
元ネタ・由来
英語圏で元祖とされているのは、「Cat on a Keyboard in Space」という1枚の画像です。シンセサイザーの情報ブログ MatrixSynth が、2006年6月13日に「Space ARP」というタイトルで投稿しました。記事には「via Andy Squirrel」とクレジットがあり、Know Your Meme は Andy Squirrel を作者として記載しています。
猫が乗っている鍵盤は、1972年に出たアナログシンセ ARP Odyssey。シンセのブログだったので、元記事のコメント欄はスライダーに乗っかった猫の座り方をいじる書き込みで埋まっていて、ミームとして扱われてはいませんでした。
火が付いたのは3か月後です。2006年9月18日、YTMND のユーザー napalmnabuco が whatyouseewhenyoudie.ytmnd.com というサブドメインに「catonakeyboardinspace」を作成。画像に Jean-Jacques Perrey の「Brazilian Flower」を延々とループさせるページで、2012年4月4日時点で91万5000ビュー超まで伸びました。
そこから2007年2月に Digg と StumbleUpon に拾われ、英語圏に一気に広がります。2008年9月29日には、web漫画 xkcd の「Height」という回にもこの猫が描かれました。宇宙の距離感を比較するコマの中に紛れ込んでいる形です。
日本の宇宙猫は別物?
ここが面白いところで、日本語圏の「宇宙猫」が2006年のあの1枚から直接来たのかは、誰も突き止めていません。
日本語版Wikipediaも起源については断定しておらず、猫のコラ画像が量産されるうちに宇宙背景のパターンが人気を得たのか、それとも背景を差し替えて遊べる画像編集アプリにたまたま宇宙の背景があって流行したのか、いずれにしてもよく分かっていない、という書き方をしています。
そもそも指しているものも微妙にズレています。英語の「Cat on a Keyboard in Space」は特定の1枚の画像の名前ですが、日本語の「宇宙猫」は宇宙背景+猫のコラ全般を指すジャンル名です。同じ系統ではあるものの、イコールで結べるほど話は単純ではありません。
「答えが無い」で終わるのも気持ち悪いので、確実に言えるところだけ並べておきます。日本で広まりだしたのは2014年ごろ。2018年8月3日にはねとらぼが実写の“スペースキャット”を記事化し、2021年8月2日にはニコニコニュース オリジナルがパロディイラスト集を組みました。2023年になってもBCN+Rが特集を出しているので、10年近く生き残っているミームということになります。
Tシャツ、パーカー、セーターと商品化も進んでいて、いつの間にか「猫のコラ画像」という枠を超えた記号になりました。
本物の宇宙猫もいる
宇宙猫はコラ画像なので、当然ながら現実には存在しません。存在しないはずなんですが、実写で成立させてしまった人がいます。
飼い主の「とろ、おにく」さんが2020年9月に投稿したもので、コメントは「やたらテレビの前にくるからテレビを宇宙にした」。テレビに宇宙の映像を映して、その前に座る猫をそのまま撮っただけです。いいねは12万9145まで伸びました。ねとらぼも「本物の宇宙猫の誕生……!」として記事にしています。
合成で作られたミームを、合成なしで再現してしまった形です。発想が強い。
使い方・例文
- 「先輩の説明が長すぎて、途中から完全に宇宙猫になってた」
- 「家賃と光熱費の請求が同時に来て宇宙猫状態」
- 推しの供給が急に重なったとき「情報量が多い」とだけ書いて宇宙猫を貼る
- グループLINEで誰かが意味不明なことを言い出したときの返信素材
「怒っている」でも「呆れている」でもなく、処理が追いつかなくて無になっているという微妙な状態を1枚で伝えられるのが便利なところです。文字で説明すると長くなる感情を画像に肩代わりさせる、リアクション画像の王道の使い方といえます。
関連する言葉
同じ「言葉にならない顔」を代わりにやってくれる素材としては、はぁ猫や困惑サルパペットが近い立ち位置にいます。はぁ猫が「で、何?」の聞き返し、サルパペットが「気まずい」担当だとすると、宇宙猫は「思考停止」担当です。
作り方の系譜でいえばクソコラの一種で、加工の雑さやシュールさが味になっている点も共通しています。逆に「脳が光って発想が飛躍する」ほうを表すGalaxy Brainは、同じ宇宙モチーフでも意味がほぼ正反対です。あちらは覚醒、こちらは停止。
動画で猫が主役をやる猫ミームブームとも地続きで、猫がリアクション素材として選ばれ続ける流れの一部といえます。
実際の猫も、たまに宇宙猫みたいな顔をします。息子が勉強を始めると黙祷ポーズに入る猫の悟りきった背中や、初めて撫でられて真顔になった猫の吸い付きながら葛藤している表情あたりは、背景を宇宙に差し替えてもそのまま通用しそうです。