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ネコの新種「ティルカヨ タイガーキャット」 前回の新種は1923年

2026年9月18日 ・ トレンド「ティルカヨ タイガーキャット」より
ボリビアの保護施設で暮らすティルカヨ タイガーキャット。明るい茶色の毛に大きめの斑が並び、耳は短く丸い
画像: 新種として記載されたティルカヨ タイガーキャット(ボリビア・ラ センダ ベルデで保護されている個体)(CC BY-SA 4.0 / Alessandro Verniani, via Wikimedia Commons。当サイトで縮小・切り抜きをしています。改変後の画像も同じ CC BY-SA 4.0 で提供します

ボリビアの山の森にいた小さなネコが、新種として正式に記載された。名前は「ティルカヨ タイガーキャット」、学名は Leopardus tilcayo。生きているネコ科で新種が記載されたのは、1923年に報告されたウルグアイのパンパスキャット以来だという。103年ぶりということになる。日本語では「チルカヨ」と書かれている記事もあるので、検索するときはどちらでも引っかかる。

論文は9月17日付で Current Biology に掲載された。タイトルは Phylogenomics and museomics reveal five distinct species of tiger cats in South America で、筆頭著者は Jonas Lescroart 氏。DOI 10.1016/j.cub.2026.08.059 から原文にたどれる。

イエネコより小さくて、耳は短く丸い

体長はだいたい45センチ、体重は1.3キロから1.4キロ。ふつうのイエネコより小さい。数字は報道によって「45センチ・1.3キロ」「46センチ・1.4キロ」と少し揺れているので、おおよそこのくらいと思っておけばいい。

毛は明るい茶色で、体には黒っぽい斑が不規則に散っている。ヒョウ柄でいうロゼットの形で、輪が閉じきっていないものが多い。耳は短くて丸く、ヒゲが長い。

住んでいるのはアンデス東斜面の「ユンガス」と呼ばれる雲霧林で、ボリビアのラパス近郊にあたる。名前のとおり雲が森にかかっているような湿った山地で、標高でいうと1,500メートル台の場所から見つかった。今のところティルカヨが確認されているのはボリビアだけだ。

新種の発表に合わせて ABC News が出した映像に、実物が映っている。

世界で確認されているのは、まだ2匹

ここが今回いちばん驚くところで、ティルカヨとして確認されている個体は2匹しかいない。

1匹はオスで、地元の家族が世話をしていたところをユンガスの保護施設に引き渡され、いまもそこで暮らしている。推定で10歳ほど。もう1匹はメスで、住民に襲われたあとに保護され、そのあと野生に帰された。研究チームはこの2匹の全ゲノムを読んで、既知のどの種とも違うことを確かめている。

最初に「これは見慣れないネコだぞ」と気づかれたのが2016年ごろ、遺伝子を本格的に調べ始めたのが2021年だという。ここも媒体によって年が食い違っていて、保護施設に引き取られたのは2017年と書いている記事もある。いずれにせよ、1匹のネコが持ち込まれてから名前がつくまでに10年近くかかった計算になる。

学名は、地元の人がずっと使っていた呼び名を借りた

新種の学名は発見者や地名から取られることが多いけれど、ティルカヨは違う。研究チームの Paola Nogales-Ascarrunz 氏は「私たちはこの種に『ティルカヨ』という名前を選びました。地元のコミュニティがこのネコを指して使っている名前です」と説明している。科学の側が名前を発明したのではなく、もともとあった呼び名をそのまま持ち上げた形だ。

おもしろいのは、その「ティルカヨ」がどこから来た語なのかがはっきりしていないこと。スペイン語ともケチュア語とも直接はつながらないらしい。地元では前から知られていて呼び名までついていたネコが、学術的には未記載のまま残っていた、という順番になる。

同じ「新しく名前がついた生き物」でいうと、日本でも夕張の鎧竜がニッポノペルタ・エゾエンシスとして記載されたのが今年の8月だった。標本が出てから名前がつくまで何十年もかかるのはよくある話で、ティルカヨの10年はむしろ早いほうかもしれない。

タイガーキャットは1種ではなく、5種に分かれた

そもそも今回の論文は、ティルカヨ1種を見つけることが目的ではなかった。南米にいる「タイガーキャット」と総称される小型ネコ、これまで見た目が似ているから Leopardus tigrinus としてざっくり1種にまとめられていたグループを、ゲノムで整理し直すのが本題だ。

チームは南米の複数の国から38匹分のDNAを解析した。うち8匹は博物館に眠っていた標本で、論文タイトルにある museomics(博物館標本のゲノム解析)はこの部分を指している。結果、タイガーキャットは少なくとも5つの別種に分かれることが分かり、そのうちの1つがティルカヨだった。

Lescroart 氏は「このボリビアのタイガーキャットが別種だとは思ってもみませんでした」と話している。Nogales-Ascarrunz 氏のほうは、野生ネコの新種が100年のあいだ記載されていなかったことを挙げて、注目すべき出来事だとコメントした。

名前がついた直後から、絶滅の心配が始まっている

保全の話も同時に出ている。研究者によると現時点では絶滅危惧(vulnerable)の扱いだが、確認されている個体がこれだけ少ないことを考えると、もっと高いリスクの区分に入る可能性があるという。見つかったばかりなのに、いきなり心配されるところから話が始まっている。

Nogales-Ascarrunz 氏はユンガスの森にカメラトラップを仕掛け、野生でどれだけ暮らしているかを記録しようとしている。2匹の次が写るかどうか、というところだ。

日本でもXで、ボリビアの森で100年以上ぶりに新種の猫が見つかったという話題がトレンドに入っている。発表からまだ1日ちょっとで、写真も情報もこれから増えていく段階にある。新しい名前が生まれる瞬間に立ち会えるのは、そうそうない。

出典は AFP 配信の phys.org の記事、ロイター配信のアルジャジーラの報道、命名の経緯とカメラトラップの話は BBC Wildlife の Discover Wildlife、語源とこれまでの経緯はナショナル ジオグラフィック

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