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「界隈曲」とは?読み方は“かいわいきょく”、元ネタは投稿者が消した4曲「海鮮市場」

界隈曲(かいわいきょく)(かいわいきょく) ・ 2026年8月24日 公開

ニコニコのタグでも、カラオケの配信リストでも見かけるのに、いざ「どんなジャンル?」と聞かれると説明しづらい。それが 「界隈曲」 です。読み方は「かいわいきょく」。

「界隈曲」とは?

単に界隈曲と言うとき、指しているのはある4曲と、その作風をなぞった楽曲群です。ジャンルの定義がかっちり決まっているわけではなく、ニコニコ大百科もpixiv百科事典も「雰囲気が似ているだけの曲もそう呼ばれる」という趣旨のことを書いています。輪郭がぼやけたまま通じている言葉、というのが実態に近いです。

ややこしいのは、頭に別の語が付く場合です。「〇〇界隈曲」と書かれていたら、それは普通に「〇〇界隈の曲」という意味で、ここで説明している界隈曲とは別物として扱われます。

元ネタ・由来

発端は2012年から2013年にかけてニコニコ動画へ投稿された4曲です。『クロマグロがとんでくる』『イワシがつちからはえてくるんだ』『ヤツメ穴』『.』。クロマグロ、イワシ、ヤツメウナギ、クラゲと、全部が海の生き物に関わることから、非公式の総称として 「海鮮市場」 と呼ばれています。

この4曲、いまニコニコで作者のページを開いても出てきません。作者は全作品を削除して引退しており、正規に聴けるのは「作曲者の名前を表記しない」という条件で転載が許可された分だけです。界隈で作者名がほとんど呼ばれず、代わりに4曲まとめて「海鮮市場」と呼ばれるのは、この事情と噛み合っています。個人名を出さずに発端を指せる呼び方が、そのまま定着した形です。本人の作品そのものは消えましたが、2014年9月には4曲のドット絵やAviUtlのプロジェクトファイル、インスト音源、UTAUのustファイルが配布されていて、2015年にも再配布されています。あとに続く人たちが同じ音と同じ絵で作れたのは、この配布があったからです。

面白いのは、この呼び方が日本語圏より先に中国語圏で使われていたことです。中国語圏のWiki「萌娘百科」に4曲関連のページが立ったのが2017年1月17日で、その時点ですでに「海鲜市场」という表記がありました。

そこから流れが変わるのが2018年です。同年2月ごろに別名義でニコニコへの投稿を始めた人物が、5月に 「全てあなたの所為です。」(略称すべあな) という現在の名義で『.』を公開します。海鮮市場の『.』とは別の曲で、タイトルだけが同じです。プロフィールは非公開のまま、モールス信号やニコニコ運営のアナウンス音声をサンプリングした曲を出していく作風で、音楽ナタリーも2020年6月の記事で「謎多き投稿者」と紹介しています。2018年中には「すべあな界隈」という言い方が出てきて、そこから固有名の限定が取れて「界隈曲」という語になったとされています。ただしニコニコ大百科自身が推測の形で書いていて、いつ誰が言い始めたかの記録はありません。

2022年になるとニコニコのタグ運用が広がり、すべあな界隈やVOICEROID楽曲まで含めて界隈曲と呼ばれるようになりました。そして2026年に入ると、JOYSOUNDやDAMのカラオケにも曲が入りました。JOYSOUNDの配信ページを見ると、関連情報の欄にUTAUのデフォルト音源「唄音ウタ」が並んでいたりして、ネットの中だけで回っていた文化がそのまま業務用カラオケに載っている感じが出ています。

特徴

音の面では、電子音楽と合成音声(とくにUTAU)の組み合わせが土台です。そこに4つ打ちのドラムと凝ったコード進行が乗ります。聴き込んだ人の分析では、丸サ進行やカノン進行をひねったものが多く、キックにはアナログ系(TR-808系)の音が選ばれやすいとされます。複数の合成音声を重ねたコーラスやツインボーカルもよく出てきます。

映像はドット絵のMVや、黒背景に四角形や枠だけを置いたもの。曲の構造をそのまま図にしたような映像が付くこともあります。

文字まわりのクセがいちばん分かりやすいかもしれません。タイトルが記号1文字や空白だけ(実際に「.」や「!」がそのまま曲名になっています)、歌詞が意味を取りにくい難解なもの、モールス信号や文字化けの形で暗号が仕込まれる、ハモリのパートにだけ別の歌詞が乗る「裏歌詞」がある。暗号の仕込みはすべあなの影響で広まったという見方もありますが、はっきりした裏付けはありません。

模倣する側もひとつの文化になっていて、すべあなの模倣曲だけで約4,000曲あるとされます(pixiv百科事典、2025年5月時点)。模倣を出す人は「界隈人」と呼ばれ、名義も「全て〇〇の所為です。」の型を借りたものが多いです。

なお、自分の曲を界隈曲と呼ばれるのを好まない作者もいます。定義が曖昧なぶん、似た音を出しているだけで括られてしまうことがあるからです。人の曲に外から貼るラベルとしては、少し扱いに気をつけたほうがいい言葉です。

ここで実物をひとつ、と言いたいところですが、発端の4曲は削除済みで、残っているのは名前を伏せる条件で転載が許可されたミラーだけ。すべあな本人のチャンネルも、代表曲「エヌ」が外部サイトでの埋め込み不可に設定されています。発祥そのものは貼れません。代わりに、なみぐるさんの『あなたは世界の終わりにずんだを食べるのだ』を置いておきます。なみぐるさん自身が自サイトの楽曲解説で「界隈曲の持つ特有の雰囲気・フレージングを大切にしつつ」「NEO 界隈曲のようなものが作りたかった」と書いている曲です。歌っているのは ずんだもん

2022年5月の公開で、再生数は171万回(2026年8月時点)。ちなみにYouTubeは2026年8月24日から再生回数のカウント基準を変更しているので、これ以降の数字は前の基準と単純に比べられません。

使い方・例文

  • 「この曲、完全に界隈曲の音してる」
  • 「界隈曲ってジャンル名だと思ってたけど、元は4曲のことなんだ」
  • 「カラオケに界隈曲入ってるのちょっと怖い」
  • 「歌詞がひらがなだけの時点で察した」

関連する言葉

音の中心にいるのは合成音声なので、ボカロP歌い手 の周辺文化とは地続きです。発端がニコニコの投稿という点では 組曲『ニコニコ動画』ニコニコ動画流星群Bad Apple!! と同じ土壌の話になります。近年のボカロ曲では フォニイメズマライザー のように単体で名前が知られる曲もありますが、界隈曲は特定の1曲ではなく作風のまとまりを指すのが違うところです。暗い色味やモチーフの近さから 病みかわ と並べて語られることもあります。

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