「ぬわーーっっ!!」とは?ドラクエ5パパスの断末魔の意味・元ネタと、リメイクで伸ばし棒が2本増えた話
ドラクエをやったことがなくても、この字面だけはどこかで見たことがある人が多いと思います。「ぬわーーっっ!!」です。悲鳴なのに、なぜか元の場面まで一緒に思い出される変な単語で、しかも大半の人が正しい表記を覚えていません。
「ぬわーーっっ!!」とは?
『ドラゴンクエストV 天空の花嫁』で、主人公の父パパスが最期に上げる断末魔です(ニコニコ大百科)。ネットでは意味をそのまま引き継いで、派手にやられたとき・取り返しのつかない負け方をしたときの一言として使われます。
この語が単体で残った理由ははっきりしていて、ドラクエのやられ台詞としては完全に浮いているからです。シリーズで敵味方問わずよく使われるのは「ぐふっ」や「うっ」のような、既存の短いうめき声。そこに1回だけ、他のどこにも出てこない音が置かれた。ニコニコ大百科もこの点を「ドラクエのキャラは基本『ぐふっ』で退場するのに」という趣旨で指摘しています。周りが定型で揃っているぶん、外れた1語だけが名前のように記憶されたわけです。
もうひとつ、この断末魔が特別扱いされるのは場面が強すぎるからでもあります。ドラクエ5は主人公の人生を幼年期から追う構成で、その幼年期の終わりに父が退場する。プレイヤーの多くにとって、シリーズで最初に食らった本気のショックがこれでした。感動の場面として語られる一方で、叫び声のほうは完全にネタとして独立している。この捻れがそのまま、この語の面白さになっています。
元ネタ・由来
場面は幼年期の最終盤、古代の遺跡です。パパスはゲマの部下であるジャミとゴンズを1人で圧倒していたのですが、そこにゲマが現れて、主人公とヘンリーを人質に取ります。パパスは抵抗を放棄し、ゲマの炎で跡形もなく焼き尽くされる。倒れる直前に、母マーサは生きているから探し続けろという趣旨の言葉を息子に残します(ニコニコ大百科・パパス)。
つまり、負けたから叫んだのではありません。圧勝していた側が、子どもを盾に取られて自分から剣を下ろした結果です。強かったことがはっきり描かれた直後に何もできずに終わるので、当時のプレイヤーには余計に効きました。
海外版では固有名詞が変わっていて、パパスは Pankraz、ゲマは Bishop Ladja という名前になっています(Dragon Quest Wiki)。断末魔のほうも当然そのままではなく、英語版では「URRRAAHH!」という叫びが当てられているとされます(ニコニコ大百科)。日本語の「ぬわーーっっ!!」が持っていた変な語感は、ここでは引き継がれていません。
作品自体の数字も押さえておくと、スーパーファミコン版は1992年9月27日発売で、国内の出荷は約280万本とされます。『III』以降のナンバリング作品で唯一300万本に届かなかった作品ですが、それでも国内のスーパーファミコン用ソフトとしては歴代6位です(Wikipedia)。2021年12月にテレビ朝日系で放送された『国民5万人がガチ投票!テレビゲーム総選挙』では2位に入っています。売れた数以上に、記憶に残っているタイプのゲームということになります。
リメイクで伸ばし棒が2本増えている
ここからが本題です。この断末魔、版によって表記が違います。
オリジナルのスーパーファミコン版は伸ばし棒が2つ。PS2版以降のリメイクでは4つに増えています。増えたのは2004年3月25日のPS2版からで、以降のDS版・スマホ版もそれを引き継いでいます。この差については、ニコニコ大百科と個人ブログのSTORY INVENTIONの記述が一致しています。
なぜ伸ばしたのかについて公式の説明は見当たりません。STORY INVENTION は、リメイクで演出が強化されて叫びの表示時間が長くなったぶん、2文字ぶんの「ぬわーーっっ」では画面が持たずに淡白に見えてしまうから、という趣旨の考察を書いています。演出に合わせて文字数のほうを伸ばした、という読み方です。
面白いのは、これだけ有名な台詞なのに誰も気づかなかったことのほうです。プレイヤーが覚えているのは「ぬわ」「伸ばし棒」「小さいっが2つ」「!が2つ」という構成だけで、伸ばし棒の本数までは誰も数えていない。だから2本増やしてもバレなかった。
その雑な記憶のされ方は検索でもそのまま出ていて、Googleで「ぬわーーっっ」と打つと、サジェストに「ぬわーっっ」「ぬわーーっ」「ぬわーっ」「ぬわーーーーっっ」が並びます。伸ばし棒と小さい「っ」の数を1つずつ間違えた表記が、全パターンきれいに揃っている状態です。正解を確かめに来る人がそれだけいる、ということでもあります。
PS2版は発売2日で出荷130万本、発売15日後の4月8日には当時のシリーズのリメイク作品として最多の150万本を記録しました。DS版も発売2週間で国内出荷100万本を超えています。それだけの人数が伸びたほうの断末魔を見ているのに、増量に気づいた話はほとんど広まりませんでした。
スーファミ版は2回表示されるという指摘もある
サジェストには「ぬわーーっっ 2回」も出てきます。これはスーパーファミコン版で、パパスが炎に包まれる前と後の2回、同じ断末魔が表示されるという話です。前掲の STORY INVENTION が実際の画面を見て指摘しているもので、公式資料や大百科側に同じ記述は見当たりません。個人の観察が1件、という段階の情報です。
ただ、記憶に残りやすい理由としては筋が通っています。1回しか出ない台詞と2回出る台詞では、刷り込まれ方が違う。
「ぬわああああん疲れたもおおおおん」とは別物
もうひとつサジェストに並ぶのが「ぬわーーっっ疲れた」です。これは「ぬわああああん疲れたもおおおおん」という別のネットスラングとの混同で、こちらは成人向け作品発祥の言い回し。ドラクエとは何の関係もありません。表記の見た目が似ているだけの完全な別物なので、混ざったまま覚えないほうがいい語です。
似た混同では「ぬわーーっっウボァー」もサジェストに出ます。ウボァーのほうは『ファイナルファンタジーII』の皇帝の断末魔で、これも別作品。断末魔が語として独立するとサジェストで隣に並んでしまうという、それ自体が面白い現象ではあります。
使い方・例文
やられた側の一言なので、主語も説明も要りません。被害の大きさだけ伝わればいい語です。
- 「バイト先のシフト表見たら来週フル出勤だった。ぬわーーっっ!!」
- 「セーブしてないのにアプリ落ちた。ぬわーーっっ!!」
- 「引き落としの通知を開いた瞬間ぬわーーっっ!!ってなった」
- 「推しのライブ、先行も一般も全滅。ぬわーーっっ!!」
コツは本当に取り返しがつかないときだけ使うことです。元ネタが人質を取られて何もできずに終わる場面なので、リカバリーできる失敗で使うと軽く見えます。逆に、自分の落ち度ではなく理不尽に押し切られた形のときは、かなりきれいにハマります。
伸ばし棒の本数は好きにしてかまいません。原典どおりにやりたいならスーファミ版の2つ、リメイク世代なら4つ。どちらも実在する表記です。
関連する言葉
同じ「断末魔が語になった」型の代表はひでぶです。あちらは『北斗の拳』でハート様が上げる悲鳴で、意味を持たない音という点も共通しています。違いは扱いの重さで、ひでぶはザコが派手に退場するための音、ぬわーーっっは物語の中心人物が退場する音。使いどころも、前者は軽い被害、後者は決定的な負けと分かれます。
やられた側の表明という役割ではグエー死んだンゴが近い立ち位置です。あちらは自分の負けを笑いに変えるための言葉なので、本人に余裕がある。ぬわーーっっにはその余裕がありません。自虐として投げたいなら前者、被害の大きさをそのまま出したいなら後者です。
叫び声を体系にまで整理した例がイヤーッ!グワーッ!で、こちらは傷の深さごとに叫ぶ語が決まっています。ドラクエの場合はその逆で、うめき声はほぼ「ぐふっ」で統一されていて、そこから外れた1語だけが名前として残りました。設計として体系を作ったのがニンジャスレイヤー、例外を1つ置いたのがドラクエ5、という違いになります。
作者が響きから作った文字がそのまま独立した例としてはズキュウウウンも同じ系列です。あちらは効果音、こちらは断末魔ですが、どちらも原作を読んでいない人にまで文字だけが届いてしまいました。
同じドラクエ発の言葉では、白骨に話しかけたときのメッセージへんじがない。ただのしかばねのようだ。が最大手です。面接の質問に呪文で答え続けるイオナズン面接もドラクエ絡みで、2026年に公式広告として復活しました。
シリーズのメッセージがそのまま商品になった例もあって、タカラトミーのドラクエ人生ゲームはマス目の文章がドラクエのメッセージウィンドウそのままです。飲食のコラボだと吉野家×ドラクエウォークのスライム顔レジ袋が「袋だけでも欲しい」と言われていました。断末魔まで商品化される日が来るかは、さすがに分かりません。