「精神と時の部屋」とは?元ネタと、1日で1年・重力10倍・一生2日までの設定
机と椅子だけの殺風景な会議室の写真に「精神と時の部屋やん」とリプが付く。締め切り前に連絡が取れなくなった友達が「精神と時の部屋に入ってた」と言って出てくる。元ネタは『ドラゴンボール』に出てくる修業部屋で、中の1年が外の1日にあたる、という設定の空間です。時間が稼げる部屋として憧れられがちですが、公式設定を並べていくと、入りたくなる場所ではぜんぜんありません。
「精神と時の部屋」とは?
「精神と時の部屋」は、『ドラゴンボール』に登場する、神の神殿の最下層にある修業部屋のことです。老界王神はこれを「時の異次元空間」と呼んでいます。
いちばんの特徴が時間の進み方で、部屋の中の1年が外界の1日に相当します。つまり2年ぶん鍛えても、外に出てきたときに経っているのは2日だけ。短期間で一気に強くなるための装置として、作中で何度も使われました。倍率を「360倍」「365倍」と書いている解説もありますが、ニコニコ大百科の記載は中と外の対応表までなので、ここでは比のまま扱っておきます。
ネットでの使われ方は、ニコニコ大百科の「精神と時の部屋」にはっきり書かれています。「転じて、何もない密室などが出た際にこうコメントされることがある」。白い壁しかない部屋、物が何もない空間、作りかけの部屋。そういう画が流れてくると条件反射でこの名前が出ます。
もうひとつ、締め切り前の追い込みや試験前の缶詰を「精神と時の部屋に入る」と言う使い方も日常的に見かけます。こちらは辞典側に記載がある用法ではないので、下の例文のほうで挙げておきます。
部屋の設定
まず時間です。中と外の対応はこうなっています。
昼休みのあいだに2週間ぶん勉強できる計算です。ここだけ見ると最高の部屋なのですが、問題は環境のほうでした。
空気の薄さは、大百科いわく高山病を通り越してデスゾーンの領域です。現実で約3分の1とされるエベレスト山頂よりさらに薄いので、常人だと数時間で酸欠になる計算になります。そこへ10Gの重力と、90度ぶんの温度差が乗る。食べ物は粉と水しかないので、缶詰の比喩どころの話ではありません。
そして怖いのが滞在制限です。入っていられるのは一生のうち2日間、中の時間で2年間まで。これをオーバーすると出口が消滅して、中から出られなくなります。ただし出入り口が消えるだけなので、気の力で次元に穴を開けて強引に脱出することは可能とされています。制限時間のほうも、一度死んでドラゴンボールなどで生き返った場合は、その直前までに入っていた時間がリセットされるそうです。
修行装置としても万能ではありません。悟空は後に「身体を痛めつけ過ぎる」とこの部屋の欠点を指摘していて、超サイヤ人フルパワーを身につけたあと、滞在時間がまだ残っているのに部屋を出て自宅での修行に切り替えています。効率だけで押し切れる場所ではなかったわけです。
元ネタ・由来
意外なのが、この部屋が最初から設定されていたものではない点です。
物語の時系列で言えば、部屋を最初に使ったのは第23回天下一武道会へ向けて修業した孫悟空です。ただしニコニコ大百科は、その時点では具体的な描写がなかった、つまり後付設定だとはっきり書いています。名前と場所だけ先にあって、中身が描かれたのはずっと後、人造人間・セル編に入ってからでした。
だから読者の記憶に残っている「精神と時の部屋」の画は、ほぼセル編のものです。何もない白い空間、ぽつんと置かれた居住スペース、扉を出た瞬間の変わりよう。あの一連の描写がついたことで、ようやくネットで使える共通イメージになりました。初出の巻数や話数、人造人間編で誰が最初に入ったかの順番までは資料によって書き方が割れるので、ここでは触れないでおきます。
その後も使用者は増えました。魔人ブウ編では魔人ブウ、ピッコロ、ゴテンクスが入っています。『ドラゴンボール超』では破壊神シャンパ編でデンデが部屋を修理し、悟空とベジータが使用。このときは制限がなくなったのか3日間使われました。未来トランクス編でもベジータが入り、超サイヤ人ロゼのゴクウブラックと互角以上に戦える戦闘力を身につけています。宇宙サバイバル編でも、力の大会の前にまたベジータでした。壊す担当も使う担当もベジータです。
使い方・例文
- 「明日提出なのに白紙。誰か精神と時の部屋の場所教えて」
- 「引っ越したばかりで家具ゼロ、部屋が完全に精神と時の部屋」
- 「テスト前だけ精神と時の部屋に入りたくなる。入ったら10Gで潰れるけど」
- 「今週ずっと精神と時の部屋にいたんで、外の情報を何も知りません」
使い方は2通りです。ひとつは大百科の書いているとおり、何もない殺風景な空間を見たときのツッコミ。もうひとつが、短期間で仕上げないといけない状況の比喩です。後者で使うときは「入りたい」と言う人がほとんどで、実際の設定どおり酸欠と10Gに触れると一気に台無しになります。そのギャップ自体がネタとして使われる場面も多い。
関連する言葉
同じ『ドラゴンボール』から生まれた言葉では、オッス!オラ悟空!が代表格です。あちらは本編に一度も出てこない次回予告専用のセリフで、こちらは本編の設定がそのまま日常の比喩になった語。作品からネットに出ていくルートが真逆なのが面白いところです。
作品の設定名が、原典を知らない人にも通じる言い回しになるという意味では、全集中の呼吸(鬼滅の刃)が近い立ち位置にあります。フレーズだけが独り歩きする型としてはお前はもう死んでいる(北斗の拳)も同じ仲間です。
短時間で成果を得たいという願望のほうに寄せると、行き着くのはタイパです。1日で1年ぶん進める部屋は、タイパという言葉が生まれるずっと前からある究極形といえます。実際の中身は倍速視聴どころか命がけですが。
ちなみにニコニコ大百科の関連項目には「メンタルとタイムのルーム」という直訳ネタの記事も並んでいます。だいぶ昔から擦られている証拠です。
シリーズの現在地は公式の DRAGON BALL OFFICIAL SITE が早いです。新作アニメ『ドラゴンボール超 ビルス』は10月11日23時15分から放送で、主題歌も発表済み。海外ではパリ郊外にドラゴンボールのテーマパークを建てる計画も動いています。