「ケバブのダンス 朝まで踊ろう」の歌詞と元ネタ、作ったのはハヤシユウ
「ケバブのダンス 朝まで踊ろう」。TikTokを流していると、両手を腰のあたりでゆらゆらさせながら横に歩くだけの動画と一緒に、この妙にゆるい曲が流れてきます。曲名がそのまま 「ケバブのダンス」。作ったのは音楽クリエイターのハヤシユウさんで、出したのは2020年5月です。5年半のあいだ表に出てこなかった曲が、去年の年末からいきなり掘り起こされました。
「ケバブのダンス」とは?
ハヤシユウさんの楽曲『ケバブのダンス』を音源にした、TikTok発のダンスミームです。振り付けは両手を腰あたりで揺らしながら、左右にサイドステップを踏むだけ。難しい動きが一つも無いので、椅子に座ったままでも、友達と並んでも成立します。
曲そのものは4つ打ちのダンスビートで、歌っている内容はケバブとタコスの取り違えだけ。真面目なダンスミュージックの体裁で、ずっとしょうもない話をしているギャップが持ち味です。TikTokで流れているのは本人いわく「サビの15秒バージョン」が中心なので、「ケバブのダンス」というフレーズだけ覚えて曲名も歌手も知らないまま、という状態になりやすい曲でもあります。
元ネタ・由来
元ネタはこれ。ハヤシユウさん本人のチャンネルで、リリースと同じ2020年5月15日に公開された公式MVです。
MVのクレジットは、Song / Lyrics / Vocal がハヤシユウさん、Guitar / Bass がファズフェイスまふおさん、Illustration が HINOTUKI さん、Dance が Ayako Osuga さん、MV Animation はハヤシユウさん本人。概要欄には「ケバブとタコスの違いがわからないダサかわいい楽曲です。」と書かれています。
着想も文字どおりの取り違えでした。めざましmediaのインタビューで、ハヤシユウさんはこう話しています。「ケバブとタコスを間違えて買ってきて、それでも食べたいからケバブを作って食べてみたらタコスの味がしたという歌詞なのですが、曲を作った当時、本当にケバブとタコスの違いが分からなくて、『あれ、どっちだったっけな?』というところから着想を得たのだと思います」。
しかも当時からTikTok狙いだったと明かしています。「TikTokで流行りやすいものは、4つ打ちのダンスビートであったり、ちょっとシュールな世界観があったりするなと思っていて」と分析したうえで作ったものの、結果は「身の回りでは割と評判は良かったんですけど、バズるには至らず、低空飛行な感じでした」。狙いは当たっていたのに、当たるまでに5年半かかったことになります。
歌詞はひたすら間違え続ける
歌詞はハヤシユウさん本人が公式MVの概要欄に全文を載せています。以下はその一部です。
サビが例のフレーズで、「ケバブのダンス 朝まで踊ろう/タコスじゃない ケバブのダンス ケバブのダンス」。わざわざ「タコスじゃない」と言い張るところが全部です。
1番のAメロは、ケバブを買いに行った話から始まって「家に帰ってケバブを確認したら タコスを買っていました」で一度こける。それでも食べたいので自分で作るのですが、今度は「できたてすぐのゲバブを口に入れたら タコスの味がしました」。買っても作ってもタコスになる。
2番はもう食べ物ですらありません。打楽器のボンゴを買ったらコンガの音がして、借りに行く途中で買い食いしたらボンゴレビアンコ。ボンゴ、コンガ、トンガ、コンゴの言い間違えだけで押し切ります。終盤は「恋のロマンス 妙なバランス 加茂桐タンス 目指せフランス」と韻だけで進んでいく。ちなみに加茂桐タンスは新潟の特産品で、新潟県出身のハヤシユウさんの地元要素です。
細かい話ですが、公式概要欄の歌詞は表記も揺れています。1番Aメロの後半2か所は「ケバブ」ではなく「ゲバブ」、サビの4行目は「タコスじゃない」ではなく「ダコスじゃない」。誤字なのか、間違え続ける曲だからわざとなのかは公表されていません。
本人がいちばん聴いてほしいのもここです。「TikTokではサビの15秒バージョンが流行っているのですが、この曲は歌詞が一番推しポイントなので、Aメロから最後まで聴いてもらえたらうれしいなと思います」。ボンゴレビアンコまで行かないと本領が分からない曲なので、これは素直に従ったほうがいい。
5年半後に掘り起こされるまで
きっかけは本人にもよく分かっていません。インタビューでは「“けばぶ”さんという方がダンスを作ってくれた」のが2025年10月で、そこから動き出したと語られています。アカウントまでは特定されていないので、本人の証言の範囲での話です。
そこから12月上旬〜中旬にかけてTikTokの投稿数が増え、12月下旬にはタレントのあのちゃんがこの音源で動画を投稿。ハヤシユウさんは2025年12月26日にXで「2020年に出した曲が5年の歳月を経て注目され始め、あのちゃんに届いたことをここに報告します。#嬉」と書きました(この投稿は現在削除されています)。テレビに出ている人では「あのちゃんがおそらく一番最初に踊ってくれた」そうで、「人に説明する時にも『あのちゃんが踊っていた曲だよ』と言えば一瞬で伝わるので、ありがたかったです」と話しています。年が明けた2026年1月には、AWAが選ぶ「HOT SONG」(TikTok内で再生数・シェア数を多く集めた15曲)に入っています。
作者本人は2021年6月に東京から小豆島へ移住していて、普段はフリーBGMや販売用BGMを作る音楽クリエイター。2023年頃からは「おしりちぎりパン」という別名義でも活動しています。ハヤシユウ名義に曲が溜まりすぎたから、というのが本人の説明。移住して5年目に、東京にいた頃の曲がひとりでに走り出した形です。
曲が先にバズって名前があとから探されるパターンは、「ドングリを殴っても死にません」やちいかわの体操の曲と同じ流れです。ショートで15秒だけ聴いた曲の正体を、あとから検索する人がまとまって出てくる。
使い方・例文
- 「朝から頭の中でケバブのダンス流れててしんどい」
- 「体育祭のダンス、ケバブのダンスでよくない? 誰でもできるやつ」
- 「ケバブのダンスの2番でボンゴレビアンコ出てきて笑った」
- 「5年前の曲って知らなかった。ケバブのダンス、掘り起こした人偉すぎる」
曲名が出てこないときは、サビを「ケバブのダンス朝まで踊ろう」とまとめて打てばたどり着けます。
関連する言葉
- まいたけダンス … 誰でも真似できる簡単な振り付けで広がったダンスミーム。ケバブのダンスも同じく「難しくない」ことが強み。
- SWEET STEP … 意味の分からないフレーズが耳に残ってTikTokで伸びた曲。中毒性の作り方が近い。
- 踊ってみた … 既存の曲に振り付けを付けて投稿する文化。ケバブのダンスの再燃も、振り付けを作った人がいたところから始まっている。
- バズる … 5年半かけてバズるパターンもある、という実例。