「失礼剣」とは?元ネタはロマサガ3の剣技、ロックマンX4では別の技を指す
戦っている最中に敵へ背を向ける。あるいは寝転がったまま剣を振る。どう見ても戦闘態度として失礼なので、技の名前もそのまま「失礼剣」です。1995年のRPGから出てきた技名なのに、いまはサガシリーズを触ったことがない人まで使っています。
「失礼剣」とは?
敵に背を向けたまま、あるいは寝そべったまま斬りつける、態度のなっていない剣技のことです。元は『ロマンシング サ・ガ3』の技名ですが、そこから広がって、ゲーム全般で「後ろを向いたまま前を攻撃しているように見える動き」を指す言葉としても使われます。
ふざけた名前のわりに、本家のほうは真面目に強い技です。名前だけ聞くとネタ技だと思われがちなので、そこが最初のギャップになります。
元ネタ・由来、1995年のロマサガ3の剣技
出どころは1995年11月11日にスクウェアから発売されたスーパーファミコン用RPG『ロマンシング サ・ガ3』です。剣の技として登場します。
ニコニコ大百科は失礼剣を「相手に斬りつけつつ背後を見せる、失礼というか、何だかよくわからない技」と説明しています。名前の由来についてはサガ用語辞典Wikiのほうが直球で、敵に背を向けるのは失礼という扱いらしい、と書かれている。技の効果ではなくマナーの問題で命名されているわけです。
性能を見ると、これが妙に便利でした。トリッキーな動きのおかげで敵に回避されにくく、しかも相手の盾防御・カウンター・バリア類を全部無視して当たる。攻撃力そのものは通常攻撃並みで大したことはないのですが、消費WPが1しかないので通常攻撃の代わりに撃ち続けられる。ネタ技の顔をして、確実にダメージを通すための技として機能していました。
通常攻撃から閃くときの難度は9で、剣技の中では「なぎ払い」の3に次いで低い数字です。そこから難度11で「かすみ二段」へ派生する。名前を覚えている人が多いのは、比較的早い段階で手に入る技だというのも効いていそうです。
作品が変わるたびに動きが変わっていった
失礼剣はシリーズを通して残り続けていますが、モーションは同じではありません。ざっくり言うと、途中から寝るようになりました。
このほか『インペリアル サガ エクリプス』や『ロマンシング サガ リ・ユニバース』にも失礼剣は出てきます。リ・ユニバースのほうは、ぴょんぴょん飛び跳ねながら敵に近づいて目の前で背を向け、振り向きざまに斬るという動きだとサガ用語辞典には書かれている。エクリプスについては効果の記載だけで、モーションの説明までは見当たりませんでした。
サガスカでの失礼剣はウルピナと結び付けて覚えている人が多くて、検索候補にも「失礼剣 ウルピナ」が出てきます。これは公式の発売前スクリーンショットでウルピナが失礼剣を使っている絵が出ていたのが大きいようで、発売当時はウルピナに失礼剣を出させるファンアートがかなり描かれた、とサガ用語辞典は書いています。
寝るようになった時点で、名前と動きの一致度は明らかに上がりました。背を向けて斬るのも失礼ですが、寝転がったまま斬るほうが失礼の度合いとしては上です。
実際、2026年9月の東京ゲームショウでリメイク版の試遊映像が出回ったときに、いちばんざわついたのが失礼剣でした。新システムでもグラフィックでもなく、緑髪のキャラが地面に寝そべって剣を振っている画面に反応が集まった。そのときの経緯はリメイク版の失礼剣が寝転がり仕様だった話にまとめてあります。技名だけ知っていて動きを見たことがなかった人が、30年越しに答え合わせをしていました。
ロックマンX4の「失礼剣」は別の技を指す
ここからがこの言葉の面白いところで、失礼剣はサガの外に出ています。
ニコニコ大百科は、ゲーム動画などでロマサガ3のように後ろを向きながら前を攻撃しているシーンに「失礼剣」とコメントが付くことが多い、と書いています。そのうえで、とくにロックマンシリーズのTAS動画におけるゼロの特殊な剣技が失礼剣と呼ばれる傾向にある、とまで名指ししている。
仕組みはこうです。ゼロのセイバー斬りは3段目まで派生しますが、1段目と2段目はボスに当てても無敵時間が発生しません。そこで初段だけ当てて、別の行動でその後の動作をキャンセルし、また初段を当てる。これを繰り返すと、とんでもない速度の連続攻撃になります。見た目には敵に背を向けながら物凄い勢いで斬りつけているように映るので、失礼剣と呼ばれるようになった。ニコニコ大百科によればツールの補助なしで再現するのは難しいものの、実機でも頑張れば似たようなことはできなくはないそうです。
ロックマンX4のRTA Wikiでは、失礼剣は「SDC」と「SSDC」の総称として扱われています(どちらかといえばSDCを指すことが多い、とも添えられている)。SDCはセイバー・ダッシュ・キャンセルの略で、攻撃ボタンとダッシュボタンを高速で交互に押す操作です。地上セイバーの1段目を出す、ダッシュで後動作をキャンセルする、セイバー1段目でダッシュをキャンセルする、これをひたすら繰り返す。一部のボスは2段目を当てない限り無敵時間が発生しない仕様なので、この押し方が刺さります。実際のRTAで基本になるのはSDCのほうで、1段目と2段目の両方を当てても無敵時間が発生しないボスにだけSSDCを使う。
つまりRTAやTASの走者にとっての失礼剣は、背を向ける技ではなく入力のテクニック名です。同じ言葉なのに、サガの人とロックマンの人で思い浮かべるものが違う。サジェストに「ロックマンx4 ゼロ 失礼剣 やり方」が出てくるあたり、ちゃんと実用の用語として定着しています。
ニコニコ大百科に失礼剣の単語記事が立ったのは2010年12月10日です。遅くともその頃には、辞典項目が必要になる程度には言葉として広まっていたことになります。
使い方・例文
技そのものを指す使い方と、後ろ向きに攻撃する動きへのツッコミとして使う使い方の2通りがあります。
- 「失礼剣で殴り続けてたら盾持ちが溶けた。WP1は強い」
- 「リメイクの失礼剣、寝てるじゃん。原作より失礼になってる」
- 「このボス、失礼剣(SDC)入れないと無敵時間で削れないやつ」
- 「振り向きざまに斬るモーション、完全に失礼剣で笑った」
サガの話をしていない場面でも、背を向けたまま攻撃しているキャラを見て「失礼剣」とコメントするのは通じます。もともとそういう広がり方をした言葉なので、無理な使い方にはなりません。
関連する言葉
同じ『ロマンシング サ・ガ3』から出てきたミームでは、私が町長ですが代表格です。あちらは悪びれない町長の態度、こちらは失礼な戦闘態度で、どちらも「礼儀」で名前が付いているのが共通しています。リメイク発表直後にファンが気にしていたのも技の話ではなく町長を殴れるかどうかだったので、このシリーズのファンは一貫して人としての態度を見ているのかもしれません。
ロックマンX4側の文脈では、RTAややり込みの界隈で使われる技術用語として扱われます。1995年のRPGの技名が、まったく別のゲームの入力テクニックの呼び名としていまも通じている例は、そう多くありません。