「神っぽいな」歌詞の「ゴットイストトート」の意味、元ネタはニーチェ
神ゲー、神対応、神回。なんでも「神」を付けて褒める時代に、「いや、それ神っぽいだけでは?」と横から言ってくる曲。ボカロP・ピノキオピーさんが2021年に公開した 「神っぽいな」 です。曲中で何度も出てくる「ゴットイストトート」が何語で何の意味なのか、そこを知ると曲の見え方がひっくり返ります。
「神っぽいな」とは?
2021年9月17日にニコニコ動画とYouTubeへ同時投稿された、ピノキオピーさんの初音ミク楽曲です。ご本人の作品としては102作目にあたります。
テーマは、その名のとおり「神っぽい」。歌詞には神っぽく見えるものが次々と並びますが、どれも神そのものではありません。ピノキオピーさんは、「神っぽい」だけで神ではない、不完全な“悟った視点”をこの曲のテーマにしていると語っています。褒め言葉としての「神」がインフレを起こしている状況を、否定するでもなく持ち上げるでもなく、少し離れたところから眺めているような立ち位置です。
「ゴットイストトート」の意味
サビに入る直前、曲中で3回聞こえる「ゴットイストトート」は、ドイツ語の 「Gott ist tot」。日本語にすると「神は死んだ」で、哲学者ニーチェの有名な言葉です。しかも歌詞ではカタカナではなくドイツ語の綴りのまま書かれているので、耳で聞いただけの人はカタカナで検索するしかない。それがこの曲の“分からないもの”の代表格になっている理由です。
ピノキオピーさん本人は、ニーチェの積極的ニヒリズムの前向きな考え方に共感する部分があり、曲名とも結びつくのでこの言葉を採用した、と説明しています。つまり「神っぽいな」と「神は死んだ」は、タイトルとサビでちゃんと対になっている作りです。何にでも神を見出す時代に、その神はもう死んでいる、と重ねて置いてあるわけです。
元ネタ・由来
もともとは愛をテーマにしたアルバム『ラヴ』の制作中にできた曲でした。ただアルバムの趣旨に合わなかったので収録は見送られ、『ラヴ』の発売から1ヶ月後に単体で公開されたという経緯があります。
背景にあるのが、2021年当時のボカロシーンの空気です。皮肉っぽく攻撃的な曲調が流行っていて、そしてその曲調自体がまた批判の対象になる。ピノキオピーさんは、その繰り返しがサイクルとして回っていく構造を感じていたと語っています。「神っぽいな」が面白いのは、そこに乗って一緒に殴り返すのではなく、サイクルごと一歩引いて眺める側に立ったところ。イラストや動画は当時の流行に寄せつつ、曲のアプローチだけ外してあります。似た時期の空気は、syudouさんの「アンチサイノウ」やAdoさんの「うっせぇわ」あたりを並べると分かりやすいはずです。
数字のほうも派手です。2021年12月9日にはミリオンを達成しました(ピノキオピーさん自身17曲目)。2022年には Billboard JAPAN の年間 Top User Generated Songs で1位を獲りました。ちなみに同ランキングの2位がフォニイ、3位がヴァンパイアなので、「歌ってみた」「踊ってみた」の母数がどれだけ大きかったかが見えます。
2026年9月21日時点で、YouTubeの公式MVは 9,359万回再生、ニコニコ動画(sm39334235)は 994万回再生。カバーも公式のものが次々出ていて、2023年3月に『バンドリ! ガールズバンドパーティ!』へRAISE A SUILENのレイヤ(Raychell)版、同年12月に『Adoの歌ってみたアルバム』へAdo版、2024年3月にLumin(ダイアナ・ガーネット)さんのカバーシングル、2026年7月にはラプラス・ダークネスさん版が『hololive Dreams』に収録されています。原曲は2023年5月発売の6thアルバム『META』にも入っています。
使い方・例文
曲そのものの話をするときと、曲のタイトルを「本物ではないけどそれっぽい」の意味で借りるときの2通りがあります。
- 「神っぽいなのサビ前のゴットイストトート、ドイツ語だって今日知った」
- 「このコラ画像、公式かと思ったら神っぽいなだった」
- 「あの神対応、よく見たらマニュアル通りなだけで神っぽいなだったわ」
なお替え歌やパロディは山ほどあるものの、「〜っぽいな」という言い回し自体が曲を離れて定着した、とまでは言い切れません。今のところは曲名として使われる場面のほうが圧倒的に多いです。
関連する言葉
この曲がまとめて刺している「神」たちが、そのまま関連語になります。神ゲー、神対応、神絵師、神作画、神展開、神回、神ってる、神調教。並べてみると、褒め言葉としての「神」が本当にあらゆるジャンルへ配られているのが分かります。
ボカロ側の文脈なら、同じくボカロP発のヒットであるメズマライザーや、ヤラララの正体を追った記事、プロセカで配信されているボカロ原曲のまとめもどうぞ。