「やめたげてよぉ」とは?元ネタはポケモンBWのベル、ムンナを蹴るプラズマ団の場面
誰かがやりすぎているのを見たときに、掲示板やリプ欄で飛んでくる「やめたげてよぉ!」。強めに止めているようでいて、本気で怒っているようには見えない独特の温度があります。それもそのはずで、この言葉は2010年発売のポケモンのゲームで、主人公の幼なじみが上げた悲鳴がそのまま持ち出されたものです。
「やめたげてよぉ」とは?
意味としては、目の前のひどい仕打ちに対して上げる悲痛な制止です。ただしネットで使われるときは、本気の抗議であることはほとんどありません。
使われるのは、やりすぎ・オーバーキル・不憫すぎる状況にツッコむ場面です。強すぎるデッキで初心者を狩っている人、すでに勝負がついている相手に追撃している人、不運が重なってボロボロになっているキャラクター。そういうものを見て、半分笑いながら「やめたげてよぉ!」と入れる。止めたい気持ちは一応あるけれど、見ている側も面白がっている。その二重の状態を1フレーズで表せるのが強みです。
表記でひとつ注意点があります。ゲーム内の実際の表記は「やめたげてよお!」で、最後は大きい「お」です。ネットで広まる過程で小さい「ぉ」に変わり、今はそちらが主流になりました。声にすると語尾がしぼんでいく感じが出るので、ミームとしてはこの表記のほうが場面に合っています。原典を引くときだけ大きい「お」、と使い分けている人もいます。
元ネタ・由来
出どころは『ポケットモンスター ブラック・ホワイト』(以下BW)です。ニンテンドーDS用ソフトで、発売は2010年9月18日。
場面はこうです。サンヨウジムを攻略したあと、夢の研究をしているマコモから頼まれごとをして、ベルと一緒に「ゆめのあとち」へ向かいます。サンヨウシティの北東に接続している工場の跡地で、今は子供やポケモンの遊び場になっている場所です。そこで悪の組織プラズマ団と鉢合わせします。
門の先でムンナを見つけると、物陰からプラズマ団のしたっぱが現れます。ムンナを蹴りながら「おら! ゆめのけむり だせ!!」と要求してきます。ムンナは夢を食べて「ゆめのけむり」を出すポケモンで、プラズマ団はその煙を欲しがっていました。それに反発してベルが上げたのが「やめたげてよお!」です。したっぱとは二連戦になり、勝っても懲りずにムンナへ手を出そうとします。
効いているのはギャップだと思います。ベルはふだん、のんびりした喋り方で、語尾がゆるくて、あまり強く出ないキャラクターです。その子がこの場面だけ声を荒げる。プレイした人の記憶に刺さって、そのまま言葉だけが持ち出されました。
ちなみにこの場面には続きがあります。そこへプラズマ団の幹部ゲーチスが現れてしたっぱたちを追い払うのですが、これはムンナの進化形ムシャーナが見せた幻影だったとされています。本物のゲーチスはその場にいません。ムンナとムシャーナはゆめのけむりを残して去っていき、待ちきれずに追いかけてきたマコモがそれを見つけて喜ぶ、という流れです。ニコニコ大百科の項目にも「こういったイベントのおかげか、ムンナ(ムシャーナ)はベルの代表的なポケモンとなっている」と書かれていて、この一件はベルというキャラクターの印象そのものを決めました。
BWの売れ方も、この場面が広まった土台になっています。予約の時点でDSソフト史上最多の188万本、発売初週の2日間で約255万本で、これはDSソフトの初週売上では歴代1位でした。そこから発売9日で340万9000本まで伸びています。同じ場面を同じ時期に見た人が、それだけの数いたということです。
ニコニコ大百科に単独の記事が立ったのは2010年10月28日で、発売から約40日後。動画のコメントで飛び交うようになり、そこからなんJやSNSへ広がっていきました。大百科の記事は最終更新が2026年7月2日で、16年たっても手が入り続けています。
使い方・例文
前振りとセットで書く場合と、単体で投げる場合の両方があります。単体でも通じますが、「!」まで付けるのが定番です。
- おら! 原稿 だせ!! / やめたげてよぉ!
- 初心者狩りしてるやん、やめたげてよぉ
- 3タテのうえに延長戦って、やめたげてよぉ!
- 上司から電話3件と留守電2件きてる。やめたげてよぉ
- 推しがまた不憫枠のポジションに置かれてる、やめたげてよぉ
止めているようで結局最後まで見ている、というのがこの言葉の使いどころです。本気で抗議したいときに使うと、相手からは冗談として受け取られます。ゲームをやっていない人でも意味だけは通じるので、元ネタを知らずに使っている人もかなり多い言葉です。
関連する言葉
同じ『ポケットモンスター ブラック・ホワイト』から出たネット用語では、ホドモエシティが代表格です。イッシュ地方の港町のBGMが音MAD素材になり、海外を経由して猫ミームの曲として日本に戻ってきました。片方はセリフ、片方は曲。同じ1本のDSソフトから、まったく別の経路でネットに残っているものが2つあるのは面白いところだと思います。ちなみにイッシュの御三家は、ポケモン30周年の一番くじでぬいぐるみになっています。
言葉だけが場面から切り離されて定型になっていく流れは、コピペの性質そのものです。誰が言ったかも、どのゲームのどの場面かも知らないまま、形だけが正確に受け継がれていく。「やめたげてよぉ」は、その中でも原典が明確に残っているほうの部類です。
拡散の主戦場のひとつがなんJでした。ゲームのセリフを日常のツッコミに転用する遊びが多い場所で、前振りと返しの2行構成もああいうノリと相性が良かった。
ムンナは30周年ソング「ポケモンオールスターズ1025」でも、1025匹の名前を歌いきる22分のMVの中でちゃんと名前を呼ばれています。あの場面で蹴られていた子が、16年後に公式の曲で名前を読み上げられているわけで、そこはちょっと救われた気持ちになります。